自治体職員の有期雇用問題

■働くナビ:自治体が非常勤職員に導入した雇用年数制限の影響は。
 (2009年6月8日『毎日新聞』東京朝刊)
 ◆自治体が非常勤職員に導入した雇用年数制限の影響は。
 ◇「安心して働けない」 相次ぐ退職、仕事負担も増加
 東京都は昨年4月から、消費生活相談員など都の関係機関で働く非常勤職員について「5年雇い止め」制を導入した。都は「再任用はありうる」としているが、元々1年ごとの有期契約に加え、更新回数を4回までとしたことで現場には不安が広がっている。
 07年12月、東京都消費生活総合センターで働く非常勤職員の玉城恵子さん(54)は、上司から「65歳定年を廃止するとともに原則として契約の更新は4回まで」と告げられた。玉城さんはキャリア20年のベテラン。週4日働いても報酬は時給換算で1400円程度といい、別の自治体でも週1日働いている。ただこれまでは、65歳まで働き続けられると思っていた。
 都は更新を4回までとした狙いについて、「効率的な執行体制を作るため5年に1度、事務事業を点検するという趣旨だ」と説明している。
 「一斉解雇はありえない」と上司から言われはしたものの、玉城さんにはショックだった。別の職場では、方針が出た直後から退職者が相次いだ。退職者の穴埋めで仕事の負担は増え、利用者へのサービス低下も避けられないなかで、自らの身の振り方も考えなければならないという。
 都には、非常勤職員の種類が三つある。一つは玉城さんのような「専務的非常勤」と呼ばれる職員で、「相談員」の肩書を持つ人を中心に169種、約650人いる。他には、医師や弁護士など特定の業務を都から任される「専門的・非専務的非常勤」と、統計調査員など臨時業務に携わる「臨時的非常勤」の職員がそれぞれいる。
 このうち、正規職員と働き方がほとんど変わらないのは「専務的非常勤」の職員で、基本的には民間の労働者と同じ労働基準法が適用され、団結権など労働3権はあるとされるが、報酬は公務員が下がれば同様に下がる仕組み。また年齢給もなく、ボーナスや退職金もない中途半端な位置づけだ。
 玉城さんは雇い止め問題に端を発し、労働組合を結成し都が就業規則に当たる要綱を一方的に変更し、団体交渉などにも応じないとして、労働委員会に不当労働行為に当たると申し立てを行っている。全国の消費生活相談員の仲間たちに「雇い止め撤廃」の署名を依頼したところ、同じように雇い止め問題で自治体と交渉している仲間など約1000人から署名が寄せられた。約3割の自治体に雇用年数制限があるという。
 しかし消費者庁設置も決まり、消費生活相談員には一筋の希望もある。都は消費生活相談員については「高度専門性にあった処遇が得られていない」との資料をまとめ、今年4月からは相談員を増やし(40人体制)報酬も3万円アップした。国会審議では野田聖子・消費者行政担当相が消費生活相談員について「正規職員化も含め雇用の安定化を図るべきだ」と答弁している。
 ただこうした動きは、たまたま消費生活行政が脚光を浴びているためで、非常勤職員全体の待遇改善につながらないとの見方がもっぱらだ。
 「後輩のためにも安心して仕事ができる環境を整えたい」。玉城さんはそう話している。【有田浩子】
 ◇総務省「厳格化徹底を」
 総務省は今年4月、自治体が臨時・非常勤職員を再任用する場合、「『同一の職に再度任用された』という意味ではなく、あくまでも『新たな職』に改めて任用されたと整理される。本人にもそう説明すべきだ」との見解を示し、有期雇用の厳格化を徹底するよう通知した。
 非常勤職員の問題に詳しい小部正治弁護士はこうした動きについて「臨時・非常勤職員に長く働けるという『期待権』を抱かせないことが目的で、安く使い続けるための手段だ」と指摘する。
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