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第6回「なんで有期雇用なん!?」集会:集会アピール文

【第6回「なんで有期雇用なん!?」集会】
つなげよう、首を! part.2――極悪大学・阪大を告発する

◆集会アピール文
2015年2月28日

 私達は2010年以来、大学有期雇用労働者の使い捨て問題に抗して、「なんで有期雇用なん!?」集会を様々な大学で開催してきました。今回は、2013年第4回集会(「つなげよう、首を!――3年&5年の壁をぶち壊せ!」)以来2度目の大阪大学での開催になりますが、それは、この問題が最も激烈な形で噴出しているのが阪大だからです。その典型が、石橋さん達2004年の国立大学法人化以前から勤務する長期非常勤職員の問題です。他の国立大学法人が労働条件の一方的不利益変更を避けるため法人化前からの長期非常勤職員の契約更新に上限を付けなかったにもかかわらず、阪大だけが2009年10月26日付「特例職員制度導入に伴う今後の雇用について」文書で、「特例職員」以外の長期非常勤職員の2015年3月末大量雇い止めを強行します。更に阪大は、非常勤職員の賃金に交通費を含めることで大多数が女性である非常勤職員のワーキングプア化・女性の貧困化を促進し、また、労働契約法第18条に定める、5年を超えて契約更新する有期雇用労働者への「無期雇用契約への転換申込権」を3年・5年等の契約更新上限を付けることで剥奪しています。
 非常勤講師(及びティーチングアシスタント(TA)・リサーチアシスタント(RA)・アルバイト)に対しても、管轄省庁の文科省が2004年3月15日付「法人化後の非常勤講師の給与について」通知で法人化後の非常勤講師にはパートタイム労働法が適用されるとしているにもかかわらず、阪大は「準委任契約」という詭弁によって有期雇用労働者の身分を否認しています。更に他の有期雇用教職員の「無期雇用契約への転換申込権」も、研究開発力強化法の「労働契約法の特例」を悪用した契約更新10年上限の就業規則で奪いました。
 阪大の専任教職員に対しては、学校教育法及び国立大学法人法の改悪を利用して「大阪大学部局長選考規程」を定めて教授会から権限を剥奪し、阪大総長が意のままに部局長を選べる制度にすることで、教授会自治の伝統を破壊しています。
 最後に、阪大の教職員と学生に対しては、2017年4月からの3学期制導入を現場の教員および学生の意見も聞かず一方的に決めることで、有期雇用教職員の労働条件の切り下げだけでなく、教育の断片化・劣化を推し進め、学内の民主主義を根底から破壊しています。
 私達は、阪大の各組合の団体交渉等に加えて、関西圏大学非常勤講師組合の大阪地検への労基法第90条違反の刑事告訴や石橋さんの「将来の地位確認裁判」等、様々な形で阪大への闘争を続けてきました。阪大が先導する有期雇用教職員の使い捨ては他の大学にも拡がることは必至です。私達大学有期雇用労働者は、その存在を決して認知されることのない透明人間・機械の歯車として扱われてきました。その私達が様々な大学の様々な立場の労働者や学生と連帯し、阪大の中で阪大に抗してこの集会を開催しました。今ここから、有期雇用労働者の使い捨てへの闘争・抵抗が更に拡がることを、心から願ってやみません。

「大学非正規労働者の雇い止めを許さない関西緊急集会」実行委員会

第5回「なんで有期雇用なん!?」集会:集会アピール文

【第5回「なんで有期雇用なん!?」集会】
じぇじぇじぇ、今度は10年!!――なんで雇用に上限つけるの?

◆集会アピール文:「辞める辞めないは労働者の自由」

2014年2月15日

 私たちは2010年から5回にわたり、この「なんで有期雇用なん!?」集会を開催し、仕事があるのに「契約満了」を理由に雇い止めされることの理不尽さや、そのように平気で人を使い捨てにする大学の姿勢に対して異議申し立てを行なってきました。この間、私たちの労働環境は、悪化の一途をたどっています。派遣の無期限化、限定正社員、解雇特区など、雇用の規制緩和が国策として推進され、「5年を超えたら無期雇用に転換する」という改正労働契約法の原則も、5年を10年に先延ばしする「研究開発力強化法」の成立によってなしくずしにされました。現在は研究者に限られているこの10年への延長も、すべての非正規労働者に拡大されようとしています。

 大学における有期雇用は、非常勤の教職員のみならず、助教や准教授にまで広がっています。細切れの雇用形態がトレンドとして全面化し、いまや大学は、私企業の論理が貫徹する場所となっています。学長選挙の廃止など大学自治は脅かされ、学生は就職プレッシャーに押し潰され、もはや大学は、人を育てる場所でも、腰をすえて何かをやる場所でもなくなってしまいました。つい昨年、東北大学が「ブラック企業大賞」にノミネートされたのは記憶に新しいところです。

 また大学が、女性差別の温床であるという事態も、何ら変わっていません。大学の非常勤職員のほとんどは女性であり、「家計補助的労働」の名のもとに、長年にわたって不当に低い待遇を押しつけられてきました。現在、ほとんどの大学は「男女共同参画」を高らかにうたっていますが、その施策の対象はほぼ女性研究者に限定されたものであり、大学カーストの底辺に置かれた女性の非常勤職員については一顧だにしていません(むろん、女性研究者の状況が改善されたわけでもなく、同じく底辺に置かれたままです)。また、これに抵抗するはずの労働組合も、多くは常勤の男性が中心となって運営されているのが現状です。

 しかし、このような状況の中でも、約1000人の雇用上限撤廃を実現した徳島大学の運動は、画期的なものでした。特に、正規と非正規との分断を乗り越えて、共に闘うことで得た成果は、私たちに大きな勇気を与えてくれました。私たち「なんなん」グループの闘いにより、龍谷大学でも有期雇用を廃止しようという動きが出てきています。大学から有期雇用をなくすことは、決して無理な夢物語ではないのです。

 言うまでもなく、雇用契約は無期が原則であり、本来、働き続けることも、辞めることも、労働者の自由であるはずです。なぜなら、働くことは憲法によって私たちに保障された権利であるからです。この権利が一方的に踏みにじられ、奪われることに、私たちは強く抗議します。

 「あきらめる前に、大学の枠を超えて連帯しよう」を合言葉に、私たちは今年もまたこうして集い、共に力を合わせて闘うことの意義を再確認しました。この異議申し立ての声が一人でも多くの人に届き、やがては大きな運動の力となることを、心から願ってやみません。

「大学非正規労働者の雇い止めを許さない関西緊急集会」実行委員会

第4回「なんで有期雇用なん!?」集会:集会アピール文

第4回「なんで有期雇用なん!?」集会@大阪大学
集会アピール文

2013年2月2日

1.「規制緩和」の急先鋒、大阪大学の労働者使い捨てを追及しよう!
 2010年に始まった「なんで有期雇用なん!?」集会も、今年で4回目となりました。今回は大阪大学での開催です。その理由は、一つには関西単一労働組合大阪大学分会と関西圏大学非常勤講師組合の、対阪大闘争を支援するためです。二つめは、多くの大学が私たち有期雇用労働者に恒常的な業務を担わせておきながら、3年や5年といった理不尽な雇用契約期間の上限をつけて使い捨てにしているなかで、大阪大学はその「規制緩和」路線の急先鋒だからです。
 今年4月から施行される「改正」労働契約法は、有期雇用を更新して通算5年を超えた場合、労働者の申し込みによって期間の定めのない無期雇用とすることを義務づけました。阪大は労働者に無期雇用の申し込みをさせないために、最長雇用年数をこれまでの6年から5年に縮めようとしています。阪大は「有期雇用ルールの見直し」の名の下で、非正規労働者の使い捨てを推進しているのです。私たちはこのような法の悪用を許しません。

2.関西圏大学非常勤講師組合は、5年上限の押しつけと闘う!
 阪大は、各非常勤講師に宛てた昨年11月27日付文書で、2013年4月から、1年契約の更新上限を5年とすることを、事前説明もなく一方的に通告してきました。文部科学省は非常勤講師がパートタイム労働者であることを認めているにもかかわらず、これまで阪大は非常勤講師の労働者性を一方的に否認し、その雇用は「準委任契約」であると、法律のグレーゾーンを悪用して詭弁を弄してきました。さらに今度は、有期雇用労働者の雇止めへの不安の解消を改正趣旨とした「改正」労働契約法第18条が4月1日から施行されるのにあたって、非常勤講師の労働者性を否定しておきながら、その主張と根本的に矛盾し、法的にも何の根拠もない契約更新の5年上限を押しつけるという、支離滅裂な暴挙をおこないました。関西圏大学非常勤講師組合はこの大学の暴挙に対して闘っていきます。

3.関西単一労働組合大阪大学分会は、長期非常勤職員の雇止め解雇を許さない!
 阪大は2004年の法人化に際して短期雇用制度を導入し、非常勤職員を最大6年で雇止め解雇することを決めました。今年の3月末も、6年を迎えたベテラン非常勤職員が雇止め解雇されるのです。そもそも阪大は、法人化前から在職する長期非常勤職員については「当分の間、更新可能年数に制限を設けない」と継続雇用をしてきました。しかし法人化の激変期が収束した2009年10月に、突然、長期非常勤職員に「お知らせ」を突きつけ、試験を受けて雇用期限のない特例職員になるか、2015年3月末で辞めるかの二者択一を迫ってきました。長期非常勤職員である関単労阪大分会の石橋組合員は、今年4月1日からの雇用の契約更新を、これまでどおり3年契約で、2016年3月末までとしておこなうことを要求しましたが、阪大は2年限りの2015年3月末まで、かつ、その後の更新はなしという契約を押しつけています。関単労は長期非常勤職員に対する2015年解雇攻勢と闘っています。

4.矢崎闘争を引き継ぎ、非正規労働者の人権無視を許さない!
 歴史を遡れば、阪大は、1984年3月末、全国で初めて、フルタイムの日々雇用職員を3年期限で雇止め解雇する制度を導入しました。それに対し、当該の矢崎さんと「矢崎さんの裁判闘争を支援し不当解雇を撤回させる会」による、激しい闘いが展開されました。その闘いは現在の非正規労働者の闘いのルーツといえます。矢崎闘争を引き継ぎ、非正規労働者の権利を獲得していきましょう。
 私たちは、第1回なんなん集会の集会アピールで、①3月末雇止め解雇を許さない、②合理的解雇理由のない「○年でクビ」を許さない、③労働者を部品のように扱う人権無視と、人を育てない使い捨ての雇用に反対する、④派遣労働にも有期雇用にも反対する、⑤正規労働者との同一労働同一賃金の均等待遇を獲得する、⑥女性差別ゆえの女性労働者の低賃金を問題にし、女性の貧困化をとめる、という非正規労働者の権利獲得目標を採択しました。この目標を再度確認し、闘いを進めます。

 2・2、第4回「なんで有期雇用なん!?」集会に参加した私たちは、大学を越えて結びつき、また、民間労働者と連帯し運動を拡大しよう! 阪大での闘いを全面的に支持し、支援しよう!

「大学非正規労働者の雇い止めを許さない関西緊急集会」実行委員会

脇田滋さん(龍谷大学)からのメッセージ

■集会へのメッセージ

 昨年改正された労働契約法は、本来なら、①常用原則を明確にして、有期雇用の「入口規制」を導入すること、②有期雇用が例外的に認められる場合にも、正規雇用との均等以上の待遇を保障する規制を導入すべきでした。しかし、これらの規制は回避されています。とくに、労働契約法自体、「これまでの労働裁判例以上でも以下でもない」という曖昧きわまりない性格の法規制です。条文で「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」といった裁判の判決文でしか使われない用語を多用した奇妙な立法です。一般の市民、労働者が簡単に理解できる文言ではありません。労働法学者の間でさえ、条文が何を意味しているのか、各人各様で、見解の差が小さくありません。ブラック企業的労務管理が横行・蔓延する、現実の日本の雇用社会の状況では、企業・経営者に身勝手な解釈の余地を与えることになるのは目に見えています。一部に「5年後の無期契約」化などに期待する声もありますが、曖昧な性格の法律規定の解釈論議や、木を見て森をみない「労働契約法活用論」に陥ることは危険です。
 ILO、EU諸国では「常用雇用」を原則に、「有期雇用」は例外としています。また、雇用不安定な有期雇用には、正規雇用をはるかに上回る賃金・手当が支給されても「均衡」がとれるか疑問です。同一労働同一賃金の原則に反して、賃金、社会保障で不利に扱われる「日本的」非正規雇用は、「世界の非常識」です。このことを多くの人々に知らせ、正しい認識を広げることが必要です。数が力です。状況を打開するには、非正規労働者の声を受けとめ、「日本的」非正規雇用撤廃を目指して闘う「労働者連帯」の拡大しかありません。
 2月2日の「なんで有期雇用なん!?」集会は、こうした連帯を拡大する、重要な意義を持つ集会です。残念ですが、私は韓国で学会があるために参加できませんが、ご盛会を心より祈念します。

2013年1月29日  脇田 滋(龍谷大学)

集会で採択されたアピール文

■「なんで有期雇用なん!?」the 3rd@京都精華大 アピール
2012.2.25
 私たちは、今日、この場に集まりました。

 それは第一に、ここ京都精華大学でいま現在、雇い止め解雇と闘っている私たちの仲間――労働運動と「豚汁」との出会いを史上初めて実現し、数々の多彩なイベントを打ち、多くの学生たちから支援を受けながら、類まれなるクールな労働運動を展開してきたユニオンSocoSocoの皆さん――を全力で支援するためです。

 そして第二に、昨年の集会の会場であった龍谷大学において雇い止め解雇され、長く苦しい闘争の末についに職場復帰を成し遂げた、嶋田ミカさんの勝利和解をともに祝福し、そのよろこびを皆で分かち合うためです。

 第三に、大学ばかりでなく、いまや全国のあらゆる職場で採用され、私たち非正規で働く者を苦しめている雇用年限、すなわち「3年の壁」「5年の壁」をぶち壊し、やがて来たるべき「非正規労働者の乱」を準備するためです。

 今こそ連帯して「NO!」の声を上げる時です。

 そもそも、「ユニオン」の語源は「1つになること」です。つまり、集まることです。古風な言葉でいえば「団結」です。ひとりひとりでは決して出来ないことが、「集まる」ことによって可能になる、と私たちは信じています。おかしいことに対して「おかしい!」と声を上げた者が今こうして結集することにより、ひとつの大きな力を得ることができる、と私たちは信じています。

 私たちは、今日この場で、以下の原則をともに確認し、ここに宣言したいと思います。

 すなわち、労働契約は無期が原則であること。有期雇用は、合理的な理由のある場合に限って例外的に許されるべきであること。有期雇用は「解雇付き雇用」に他ならず、「くび」になることを前提とした雇用形態であり、働く者の尊厳を奪うものであるということ。

 この3月末に、「契約期間満了」を理由として全国で行われようとしている大量の雇い止め解雇を私たちは許さないということ。「納得して契約したんだろう」という決まり文句で不当に押しつけられている不安定な身分を、決して許さないということ。

 いま国会で審議されようとしている労働契約法改正案が、「5年でくび」の法制化にほかならず、私たちにとって何のメリットもないということ。出口規制ではなく、入口規制こそが必要であること。そしてそのような有期雇用の規制は、均等待遇の実現、差別禁止の規定とともになされなければ意味がないということ。

 非正規労働者がとりわけ女性に集中し、女性の貧困問題を生み出していること。夫に扶養されることを前提に、「パート労働」「家計補助的労働」として長い間、不当に安く賃金を抑えられてきたこと。しかもそれが見えなくされてきたということ。

 そして「同一労働同一賃金」こそが原則に他ならないこと。正規職員と変わらぬ仕事をしているのであれば、それと変わらぬ賃金を支払うべきであること。いわれのない格差や差別は、なくすべきものであること。

 そもそも「大学」という人を育てる場で、人を使い捨てること自体が矛盾しているということ。労働者を部品のように扱い、雇用の調整弁とみなす人権無視が大学という場で堂々とまかり通っているのは、どう考えてもおかしいということ。

 全労働者の35%、全国1733万人の非正規労働者がおかれた状況、「日本の常識は世界の非常識」といわれるこのおかしな現状を、今ここから変えなければいけないということ。

 「あきらめる前に、大学の枠をこえて連帯しよう」を合い言葉に、今後も私たちは、非正規雇用がなくなるその日まで、現場での闘いを続けていくということ。以上です。

 最後に、私たちは呼びかけます。

 「有期雇用をなくそう!」

「大学非正規労働者の雇い止めを許さない関西緊急集会」実行委員会

集会での上映作品『私に賞味期限はありません!』と大椿さんからのメッセージ


集会で上映した、大椿裕子さん作の3分ビデオ『私に賞味期限はありません!』です。
2011年12月4日、《レイバーフェスタ2011》で上映された作品です。

以下、作者の大椿さんからのメッセージです。

■第3回「なんで有期雇用なん!?」集会にお集まりのみなさんへ

 2010年3月末、4年間勤務した関西学院大学を、有期雇用であることを理由に雇い止め解雇になった大椿裕子(おおつばきゆうこ)です。初回から実行委員として参加していたこの集会に、今回は参加することが出来ず、その代わりに私が初めて作った、拙い映像作品をみなさんに見ていただきました。
 「私に賞味期限はありません」というタイトルは、関学との団体交渉の中で、繰り返し感じてきた私の思いです。「なぜ、この業務が有期雇用でなければならないのか」というこちらの問いに対し、彼らは「新しい考え方、新しい知識、技術をもった人を4年ごとに入れ替えるのが関学の重要な人事政策である」と言い続けました。「あなたの能力は4年も経てば枯渇する」そう言われているようでした。経験を重ねることによって、より質の高い仕事が出来るようになるという可能性について考えることは、彼らには許されなかったのです。絶対に、考えてはいけなかったのです。
 38歳になり、私が抱える現実や思いとは別のところで、一方的にリミットを設けられていることの多さに気づきました。労働者としてだけではなく、女として、子どもを産む性として、私ではない誰かが、私の賞味期限を勝手に決めるのです。そして、私自身も次第にそこに絡め取られていくのです。「まったく、余計なお世話だわっ」、そんな思いでこの作品を作りました。
 2009年2月から始まった私の争議も、3年を迎えました。雇い止め解雇になり2年が経とうとしています。2010年3月に大阪府労働委員会に申し立てた不当労働行為救済申立は、2011年5月に全面棄却となりました。「組合加入前から、4年で雇い止めになることは決まっていた。学院はそれに対する十分な説明はしてきた」と府労委は学院側の主張を全面的に認めました。しかし「法人側の規定・労働契約及び人事政策等の合理性の有無はともかくとして」という表現を3度に渡り使用し、法人側に問題があったことを臭わせながらも、法人の規定・労働契約・人事政策等が、不当労働行為とどう関係しているのかという点については調査を避け、判断しませんでした。
 その後、中央労働委員会に再審査申立を行い、先日2月21日、私の証人尋問を行い結審しました。4月初旬、最終陳述書を提出し、約3ヶ月後には命令が出ると思われます。中労委第1回調査の時、労働者委員からこう言われました。「僕の経験から言って、この手の事件は新幹線代の方がもったいない」と。つまり、勝ち目はないから、早く結審して、あなたは証人尋問で言いたいことだけ言って、いい条件で金銭和解した方がいいよと言いたいのだなとわかりました。屈辱的でした。労働者を救済する場である中央労働委員会で、労働者委員によって、そのようなはなからやる気のない戯言を聞かされたのです。もちろん、証人尋問の場でその発言について触れ、「あなたたちの中に、有期雇用に勝ち目はないという前提がないか?その思考停止を自分に許さないでほしい。司法も、労働委員会も契約ありきで、その先にある不当労働行為性については踏み込まないようにしている。一歩踏み出す勇気を持ってほしい。そして、あなたたちのプライドをかけて審査し、その結果を命令として私に突きつけてください」と伝えてきました。
 今、国は、有期雇用法制について議論し、「5年以上勤務した者は、本人の希望があれば無期雇用にする」という法案を立法化しようとしています。有期雇用を経験したあなたならわかるでしょ? この法案が、はしにも棒にも引っかからない法案であることを。しかも「本人の希望があれば無期雇用」という、どこまでも上から目線。この法案をこのまま通してはいけません。
 非正規の数は、いまや35%。もう3分の1以上を占めているのです。立ち上がりましょう! 私たち非正規が立ち上がり、横に手をつなぎましょう。今の社会は、私たち非正規に依存して成り立っているのです。私たちが本気でストライキを起こせば、この社会は止まります! それくらい力があるのです。私たちの存在と、私たちが持つ力を信じましょう!
大椿 裕子

大椿さん執筆記事「有期雇用では労働者守れぬ」

■有期雇用では労働者守れぬ
  労働組合役員 大椿 裕子
  (神戸市兵庫区 38)

 厚生労働省の労働政策審議会は、契約社員や期間従業員などの有期雇用契約について上限を5年とする建議を小宮山洋子厚労相に提出した。本人から申し入れがあれば無期雇用に転換する仕組みも導入した。
 審議会に出席していた連合の労働者側委員は、この法案に「特段の異論はありません」と回答した。果たしてこの法案が有期雇用労働者の保護になるかどうか、私は非常に疑問に思う。
 私は2010年3月末、有期雇用を理由に私立大学を雇い止めで解雇された。契約期間は1年ごとの更新で4年勤務した。解雇撤回の争議は現在も継続している。
 大学の有期雇用労働者の契約期間の多くは3~5年に集中している。上限を設けたところで5年以下の契約期間の場合、解雇・雇い止めは免れない。契約期間を更に短く設定する雇用主が増え、解雇・雇い止めのサイクルはより短期化するだろう。
 また厚労省は、無期雇用に転換後も「有期契約時の待遇を引き継ぐ」と言っており、正規労働者との待遇格差は縮まらない。上限を設けず、恒常的な業務は「原則無期雇用」としなければ、解雇・雇い止めは今後も後を絶たない。実効性が伴う法案を望みたい。

【2012年1月21日『朝日新聞』(関西版)「声」欄掲載 *ブログ掲載について本人に確認・了解済み】▲

*この記事にかける大椿さんの想いや、掲載におけるエピソードなどが、こちらのブログエントリに書かれています。ぜひあわせてお読みください。

脇田滋さん「労働者派遣法 抜本改正の公約果たせ」

■《私論公論》労働者派遣法 抜本改正の公約果たせ
 龍谷大法学部教授 脇田 滋

 (2011.12.30付『京都新聞』朝刊[第7面]オピニオン欄)
 「労働者派遣法」改正案が昨年の政府案から大きく後退した。11月、民主、自民、公明の3党が「製造業派遣」と「登録型派遣」の禁止規定を削除する修正案に合意したのである。3党案は継続審議となったが、来年初めの国会で成立する可能性が高い。
 日本の派遣法は経営側にのみ有利という点で世界でも際立っている。派遣先企業が、使用者責任をほとんど負わなくて済むからである。独仏伊などEU諸国や韓国の派遣法に共通しているのは、①長期派遣や違法派遣の場合の派遣先常用雇用責任 ②同一・類似業務の正社員との均等待遇 ③労働者保護面での派遣先責任などの規制である。日本法は、①②がなく、③もきわめて不十分である。
 派遣労働の弊害は、2008年、世界経済危機を口実とした、大量の「派遣切り」で一挙に可視化された。製造現場を支えて働いていた多くの派遣社員、構内下請け・期間工が、一方的な解雇・雇い止めによって、突然、職場を奪われた。宿泊施設からも追い出された労働者のために、各地で「年越し派遣村」の取り組みが広がり、世論の大きな共感と支持を受けた。
 09年6月、民主、社民、国民新の野党3党(当時)が派遣法改正案に合意した。これは、派遣労働の弊害をなくそうとする点で多くの積極的内容をもっていた。しかし、政権交代後の政府案は、この野党3党案を媛小(わいしょう)化させ、さらに上記の民主、自民、公明3党案は、違法派遣の場合の派遣先「みなし雇用」規定の施行を3年後に延期するなど政府案からも一層後退し、法改正に消極的であった旧政権案とほとんど変わらない。
 「自立できない低賃金」と「いつ失うかも知れない不安定な雇用」の派遣労働が広がれば、正社員雇用も脅かされ、社会保障の基盤も崩壊する。企業の横暴な「派遣切り」「大量解雇」を何としても防がなければならない。政権交代は、こうした危機感を強く抱いた多くの国民が、派遣法の抜本改正を約束する民主党のマニフェストに期待した結果である。現在の3党案では、派遣労働者の状況をほとんど改善できない、「名ばかり改正」になってしまう。
 経営側は「国際競争」「労働者のニーズ」などを理由に法規制強化に反対する。しかし、近年、国際競争で台頭じてきた韓国は06年に「非正規職保護法」を制定し、「2年での正規職化」「正規職との差別禁止」など日本より格段に強い労働者保護を導入して、正規職転換で目立った成果を上げている。韓国の最高裁も、昨年、派遣法を適用して、「現代自動車」の社内下請け労働者に正社員の地位を認める画期的判決を下した。日本は、EUだけでなく韓国にも大きく水をあけられた。
 既に、非正規労働者は全体の4割に迫っている。女性、若者では5割以上の水準である。本来、不安定な雇用の派遣労働者には、安定雇用の正社員以上の待遇をして初めて均衡がとれると考える必要がある。フランスでは派遣や有期雇用の場合、賃金の1割相当額上乗せを義務づけている。「非正規雇用は低賃金でもよい」という日本の常識は世界では非常識である。
 「社会あっての企業」である。利益のみを追求して責任を回避する日本の企業文化を改め、労働者保護に大きく舵を切るべきである。民主党は政権交代の出発点を見失うことなく派遣法抜本改正の公約を誠実に果たすべきである。▲

『女性労働研究』55号:「均等法25年と女性労働――分断から連帯へ」

◆嶋田ミカ(原告) 20110322 「〔法廷から〕なんで有期雇用なん!?――龍谷大学雇い止め事件」,『女性労働研究』55:159-165

上記収録してます。
★→目次情報

「なめたらアカン女の労働!!――京大雇い止め裁判の判決に寄せて」

嶋田ミカさんがご自身のブログ《嶋田ミカの雇い止め日記》に、「京大雇い止め裁判判決について」として、判決に対する怒り・分析・展望を書かれています。ぜひご一読を。

「なめたらアカン女の労働!!――京大雇い止め裁判の判決に寄せて」
 (嶋田ミカの雇い止め日記 2011-04-05)

さぁ、私の命はおいくらか?――書評『今こそ有期雇用労働者の権利確立を!』

『労働情報』813号(2011年4月15日号)に掲載された(p.16)大椿さんの書評原稿を以下に転載します。


■さぁ、私の命はおいくらか?――書評『今こそ有期雇用労働者の権利確立を!』
 =有期労働契約の法規制=学習資料編集委員会編/頒価300円
 ◇評者:大椿裕子(大阪教育合同労組/関西学院大学雇い止め解雇事件当該)

 名古屋の2人の弁護士が、有期雇用労働者が交通事故で死亡した場合、その損害賠償は、全産業の平均賃金を適応するのは妥当性に欠く。相当程度減額した上で算定すべきという論文を書いていたことを本書で知った。
 昨年3月末、有期雇用を理由に大学を雇い止め解雇になった。それ以前も従事した仕事の多くが非正規。大して有名な大学も出てないし、女だし、37歳で未婚だし、子どもいないし!一体私の命の値段、どんだけ買い叩かれんねん?そう考えていたら怒りや悲しみを通り越し、もう笑うしかなかった。
 私が雇い止め解雇撤回を求め、組合に入り争議を始めた頃、家族、友人、同僚、新聞記者や地方の政治家も「言っていることは正しいが、一旦契約したものを撤回できるわけがない」と言った。団交に出席した大学理事からは「有期雇用に納得して契約したのだから、それはあなたの自己責任」と言い放たれた。その度に「オカシイのは私か?」と気持ちが揺らいだ。「恒常的な業務を有期雇用にすること自体が問題」という確信に辿り着けたのは、組合や、同じように声を上げた有期雇用労働者の存在があったからだが、当時、本書のように有期雇用の問題点を体系的かつ簡潔にまとめたものがあれば、私は自分を責めることから早い段階で解放されていたかもしれない。
 かつての私のように、オカシイと感じながら確信が持てず、「変えられない」と諦めている有期雇用労働者たちに、そして、薄々有期雇用の限界を肌で感じていながら見ぬふりをしている使用者達に、互いがこの問題に向き合う導入として、私はこのパンフレットを手渡して歩きたい。
 有期雇用は変えられる!▲

【呼びかけ文】「もうすぐ、雇い止めになる貴方へ」

「もうすぐ、雇い止めになる貴方へ」
(2011/02/19)

――貴方も雇い止めになってしまうんだってね。
つらいよね、悔しいよね、途方にくれているんだね。私もそうだったからよくわかるよ。
でも、あきらめてはいけない。私たちといっしょに闘おう。

――クビになって声を上げるなんて恥ずかしいって?
私もそう思ってた。自分の失業を公表するなんて、って。でも気づいたんだ。人間としての尊厳を踏みにじられて黙っていることの方が、ずっと恥ずかしいことだって。

――闘う余裕なんて無いって?
今、おとなしく雇い止めを受け入れて引き下がって、幸運にも次の職が見つかっても、しょせん有期は有期……。3年後、5年後にはまた放り出される。どんなに貴方ががんばって働いても、それが評価されることはない。際限のない有期雇用の繰り返し、出口なんて一生見つからないんだよ。

――有期雇用しか見つからないのは、自分のせいではないかって?
何度も不採用になると、そう思ってしまうよね。私も何十と応募しては落ちた頃、自己評価が下がり、鬱病になるほど悩んだよ。でも自分を責めてしまったら、雇用者側の思う壺だ。
考えてもみて欲しい。1つのポストに100人以上の応募があるんだよ。99%が落ちるのは、果たして自己責任だろうか? 椅子取りゲームの椅子の数が絶対的に足りないのは、社会の責任ではないのか。

――大学の経営状態が悪いから、有期でも仕方がないって?
そういう大学に限って、非正規雇用で人件費を浮かして、数十億の設備投資に走り、巨額の内部留保を溜め込んでいるじゃないか。浮かせた人件費で学費を下げたとか、経営が苦しいから正規職員や専任教員の給与を減らしたなんて話を、貴方は聞いたことがあるだろうか。

――声を上げたって、負けるに決まってるって?
確かにそうかもしれない。でも黙っていては決して変わらない。それどころか悪くなる一方だ。世間では安定職だと思われている大学教職員が使い捨てにされている実態を、知ってもらわなければいけない。
刀折れ、矢尽きるまで闘い抜いた敗北は、屈辱に甘んじる「平穏」より、数段価値があると私は思う。

一人一人の闘いはささやかでも、私たちが手を取り合えば、それは大きなうねりになる。
連帯の力を信じて、私はいつでも貴方に手を差し伸べる。
貴方の勇気を信じて、私は何度でも貴方の心に届くまで呼び掛ける。

――さあ、いっしょに闘おう。

*これは、デモ用チラシ裏面に掲載した、実行委から(集会参加者/沿道の方々/そしてこのブログを見ているかたへ)の呼びかけ文です。

「グローバル経済」への「女性」の「活用」「戦略」には反対です。

大沢先生は純粋に良心から提言してくださっているのでしょうが、私たちはそれには乗れません。国家や企業の「戦略」に「動員」する名目でないと、女性労働は変革できないのでしょうか?(もちろん、「税制や社会保障制度」の「改善」は必要です。しかし、それとこれとは切り離しても考えられるはず)。

■働くナビ:男女共同参画計画が今年、改定されます。 大沢真理氏の話
 (2010年6月14日『毎日新聞』東京朝刊)
http://mainichi.jp/life/today/news/20100614ddm013100035000c.html
 ◇成長戦略として位置づけて
 00年の第1次計画策定にかかわった、東京大社会科学研究所の大沢真理教授に、今回の答申案についての評価と課題を聞いた。
     *
 「反省」から入っているのは良いことだ。ただ、男女共同参画が進まなかった理由として、ほとんどすべての項目に「国民の意識」が前面に出てくるのは違和感がある。政治家や行政が責任を持って、法律や制度の改正を進めるべきだ。
 税制や社会保障制度の中に、女性の就業を阻害する要素があり、それが改善されないことで何が起きているか。リーマン・ショックで日本経済は激しく落ち込み、諸外国に比べ回復が遅れている。これは、グローバル経済の変動に対し、女性が活用されず、男性稼ぎ主中心の社会経済システムがいかにもろいか、ということを示している。大黒柱が1本ではそれが倒れれば全部崩れる。消費が必要な時も貯蓄に走り、内需が低迷する。男女共同参画は、成長戦略として位置づけられるべき重要なテーマだ。▲

日本労働弁護団による「有期労働契約研究会の中間取りまとめ」に対する意見

■「有期労働契約研究会の中間取りまとめ」に対する意見
2010年4月30日 日本労働弁護団(幹事長 水口洋介)
http://roudou-bengodan.org/proposal/detail/20100430.php

★これはぜひ読んでください!
「そこ、よく言ってくれました!」という箇所がたくさん。
すばらしいお仕事です。
これを受けて、私たちもがんばらねば、ですね。

「有期労働契約研究会中間取りまとめ」を読んでいます。

実行委有志で、4月から、厚生労働省「有期労働契約研究会中間取りまとめ」を読み始めました。
第一回の勉強会で読んだ部分でみながひっかかった箇所を挙げると、
◆まず、この「有期労働契約研究会」自体が、「就業構造全体に及ぼす影響も考慮し、有期労働契約が良好な雇用形態として活用されるようにする観点も踏まえつつ、引き続き検討する」(労働政策審議会答申「今後の労働契約法制及び労働時間法制の在り方について(報告)」[平成18年12月27日])という方向性をふまえて開催されるに至っていること(開催要項参照)。
→最初から有期労働契約を「活用」していく観点が前提になっている。【おかしい!】
◆有期労働契約が、労働者にとっては「勤務地や責任の度合い等の点で家庭責任の状況など自らの都合に合った多様な働き方の選択肢の一つ」としてあり、結果、「労使の多様なニーズにより用いられてきた」とする認識(p.2)。
→労働者が(使用者側と対等なレベルで)主体的にこの形態を「選択」している、という認識が前提にある。【おかしい!】
◆「本来正社員を希望しながらやむを得ず有期労働契約労働者となっているような者を典型に、先が見えない不安や頑張ってもステップアップが見込めないことなどから、働く意欲の向上や職業能力形成への取り組みが十分でない実態」があることを認め、「このような雇用の不安定さ、待遇の低さ等に不安、不満を有し、これらの点について正社員との格差が顕著な有期労働契約者の課題に対して政策的に対応することが、今、求められている」(p.4)としながらも、そのすぐあとに「有期労働契約は求人、雇用の場の確保、特に、無業・失業状態から安定的雇用に至るまでの間のステップという点で役割を果たしていることを評価することも必要」(p.5)などと、実態とかけ離れた理想像を打ち出して問題に直面する姿勢をいきなり崩している。【結局、腰引けてるじゃん!】
あと、「不満」という言葉づかい(全体で何度も出てくる)が気になる。これだとニュアンスとして、本来構造的な問題が、労働者の「感情」(わがまま?)の問題に回収されてしまう危険性がある。
◆「職業生涯全体を見据え、キャリア形成のために時宜を得て有期労働契約が活用されることで、職業能力の向上に寄与する役割も期待できよう」(p.5)
→【おかしい!美化するな!】
◆企業側が有期労働契約を市場的な「リスク」に対応するために使っている点について、「そのリスクを専ら有期契約労働者の側に負わせることは公正とは言えない」という問題意識を持ちながらも、「有期契約労働者の雇用の安定や公正な待遇等の確保を考えるに当たって、正社員に適用されるルールとのバランスは意識されるべきであるが、本研究会は、正社員に適用されるルールそのものを論ずる場ではない」(p.5)と明言。【逃げすぎでしょ!しかもいきなり言い訳!】
「有期契約労働者について、有期労働契約に関わる諸課題に即して有期労働契約の在り方に関するルールを検討する必要がある」(p.5)
→あくまで正社員とは「別立て」で論じる構え。正社員の利害代表団体から反発を受けないための配慮?

★話し合ったこと。
正規雇用と分けて、有期雇用だけを取り出すのはなぜか?
本当にかっちり正規雇用と有期雇用と分けて話ができるのか。ルーズな職場もある。仕事が同じなのに契約期間があるかないかという理由でルールができてしまっていいのか。
有期雇用のルールが使用者側に有利にできてしまうとそれに縛られてしまって、労働者の権利主張が難しくなるのではないか。契約は契約だと押し切られてしまうのではないか。
非正規VS.正規の対立軸を意図的に出さないようにしている。
個別の労働法制はいつも名目は○○労働者の「保護」だが、実は労働者を差別的に分断している現状の正当化でしかないのではないか。

基本的には、「すでに使用者側が労働者を使い捨て――「流動性」の確保――するために有期雇用を利用している現状を追認するものではないか」という印象を強く受けました。

次回は、この「中間取りまとめ」の論証根拠とされる「平成21年有期労働契約に関する実態調査」結果について検討する予定です。

「有期雇用――差別的な脱法行為に規制を」

■有期雇用――差別的な脱法行為に規制を
 (2010年3月19日『朝日新聞』東京版朝刊17面[私の視点])
   大椿 裕子[おおつばき・ゆうこ]
   (関西学院大障害学生支援コーディネーター)
 有期雇用が大学に広がっている。私も関西学院大を3月末に雇い止めとなる1人だ。京大で有期雇用撤廃無期限ストをする非常勤職員2人らと2月末に大阪で「なんで有期雇用なん!? 大学非正規労働者の雇い止めを許さない関西緊急集会」を開催した。非正規労働者ら100人が北海道、関東、東海からも呼びかけに応じて集まった。
 数年で一律に雇い止めとなる有期雇用は私立大では1990年代から始まり、国立大にも04年の法人化以降その波が押し寄せた。8割以上が女性で女性労働の搾取の問題でもある。今では20代・30代の女性・男性が置かれる当たり前の労働環境になってきた。
 私の雇用は最長4年とされて、障害のある学生の支援を担うコーディネーターとして勤務している。雇用期間が4年で終了することに疑問を抱いて個人加入できる労働組合に入り、昨年から大学側と計6回に及ぶ団体交渉をしてきた。大学側に継続雇用する意思は全くなく、団交は決裂。このままでは3月末解雇は避けられない。
 毎年、一定数の障害学生入学を見込み、支援する専門部署を設置した以上、業務は今後も継続する。有期雇用とする根拠を尋ねても「新しい知識と技術を持った人材を4年ごとに刷新するのが本学の重要な人事政策」と繰り返すのみ。「有期雇用であることに納得して契約したのだから、それは自己責任である」と言う。「納得して契約した」に私は強烈な違和感を持つ。全国で働く障害学生支援コーディネーターのほとんどが3~5年の有期雇用だ。私たちに有期雇用以外の選択肢は初めから与えられていない。
 最初は、確かに有期雇用と分かって契約したのは私だと自分を責め、「私は不当な扱いを受けているのではないか?」という疑問や怒りを封じ込めていた。何度となく心が揺れ動きながら「そもそも、恒常的な業務を有期雇用にしていること自体が問題だ」という確信にたどりつくまでには多くの時間が必要だった。
 数年ごとに雇い止めで人を入れ替えるのは、反復更新による更新期待権が生じないようにする方法だ。集会で基調講演をお願いした脇田滋・龍谷大教授は、有期雇用は労働契約法16条「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用[らんよう]したものとして、無効とする」に反する脱法行為と指摘する。正規職員と比べものにならぬ低賃金で働かされる差別的な待遇を撤廃するためにも、法的な規制と抜本的な制度の組み替えが急務である。
 人を育てず、働く力を貧困化させる有期雇用のシステムを、次の世代に引き継がないためにも、今私たちは声を上げていかなくてはいけない。▲

当日採択したアピールです

■なんで有期雇用なん!? 大学非正規労働者の雇い止めを許さない関西緊急集会 アピール
2010.2.27

1 3月末雇い止め解雇を許さない!

この3月末、関西の国公立・私立大学はこぞって非正規労働者(非常勤職員・教員)を大量に雇い止め=解雇しようとしている。完全失業率5.1%、失業者数336万人(2009年)という危機的状況の中で、首切りを行おうというのだ。当事者の非正規労働者にとっては「死活」問題であり、雇い止め=解雇を絶対に許すことはできない。本日の集会によって、私たち関西の大学で闘う非正規労働者が初めて結集する。連帯し、問題を広く可視化させ、3月末雇い止めを許さない闘いにつなげよう!

2 ○年でくびルールは撤廃せよ!

大学は非正規労働者を一年雇用にし、しかも更新回数の期限をきめた一律○年でくびルールを押し付けている。
まず一年雇用はおかしい。雇用は期間に定めのないのが当たり前である。それが許されるのはどうしても期間を区切る必要のある臨時的業務に限られる。よって臨時的でもない業務を一年雇用にすることは脱法行為であり、期間の定めのない雇用とみなすべきである。
つまり一年契約が終わったと雇い止めにすることは解雇と同じであり、通常の解雇同様、合理的理由が必要となる。
つぎに一律○年でくびは絶対におかしい。
一律○年で雇い止め解雇は、労働者が勝ち取った更新期待権の脱法を目的としており、そこにはまったく正当な理由はない。法的にも道義的にも許されない不当解雇である!

3 非正規労働者の使い捨てをやめよ!

一律○年でくびは、労働者を使い捨て、育てる気はないとの宣言である。人を育てる教育の場で許されない。学生にどう説明をするのか。
人が育たなければ当然、教育研究の質の低下を招く。また、引き継ぎばかりで職場を疲弊させる。大学にとってもなんら利するところはない。
また使い捨ては、労働者を部品のように扱う人権無視である。人を人とも思わない扱いにより、人としての誇り、また労働に対する誇りは傷つけられる。スキルを蓄積していくこともできない。労働意欲も著しく失われる。
また、使いすてられる労働者は、この雇用不安・失業者対策も不十分な社会の中で、貧困のサイクルから抜けられず、将来の生活設計もできない。
大学は一刻もはやく、こんなひどい非正規労働者使い捨てをやめよ!

4 派遣も有期もNO!

間接雇用は労働者の権利を奪うものであり、派遣労働は原則禁止されなければならない。今回の改正案では一番問題の多い登録型派遣と日雇い派遣に対する根本的な規制はなく抜け穴だらけである。派遣労働者約202万人(08年6月時点)のうち、規制対象は44万人程度でしかない。
派遣労働を直接雇用に切り替えたとしても、有期雇用であるかぎり労働者の不安定な状況は変わらない。派遣と偽装請負や有期雇用などを交互につかう悪質な大学・企業もある。間接雇用を規制すること、有期雇用を規制することは車の両輪である。
派遣法は廃止、そして有期雇用規制法を制定せよ!

5 同一労働・同一賃金を獲得しよう!

非正規労働者の仕事の多くは恒常的業務であり、臨時的・一時的な業務ではない。非正規労働者は、正規職員と何ら変わるところのない仕事をこなし、実質的に各大学の教育研究を支えてきた。しかし、同じ職場で同じ仕事をしていながら、賃金・労働条件などに正規職員とすざまじい格差がある。賃金・労働条件・待遇はおける正規職員との差別的とりあつかいをやめろ。同一労働・同一賃金、均等待遇を獲得しよう!

6 女性の貧困化をとめよう!

パート労働は女性の仕事とされ、夫に扶養されることを前提にして、低賃金のまま据え置かれてきた。それが非正規労働という名で、今では20代・30代の女性・男性がおかれる当たり前の労働環境になりつつある。とはいえ現在でも、日本社会の貧困化は、社会の女性差別ゆえに、女性労働者に集中している。年収200万円以下で働くワーキングプア労働者は特に非正規女性労働者に集中している。さらに、高齢女性の貧困は深刻である。65~74歳の単身女性の年間収入(年金)は、120万円以上180万円未満が30.3%、120万円未満が26.3%である(内閣府08年全国調査)。この年金額の低さは、現役時代の女性労働者の働き方(非正規労働)による低賃金の反映である。女性の貧困化をとめるための闘いをつくりだそう!

7 大学の非正規労働者のネットワークをつくろう!

本日、私たちは「あきらめるまえに、大学の枠をこえて連帯しよう」を合言葉に集い、非正規労働者が共に連帯して闘うことの必要性を確認した。今後も容赦なく続くであろう非正規労働者の使い捨て・雇い止め=解雇と闘うために、職場・組合・大学をこえた非正規労働者を主人公とした新しい運動の流れをつくりだしていこう。すでに、ストライキ・裁判・団交・抗議行動などへの相互支援が始まっている。現場の闘いを基軸とした労働運動をつくっていこう。大学の非正規労働者の連帯をめざしたネットワークを全国に拡大し、 有期雇用をなくそう!▲

大椿さん:「私としごと」

■私としごと
 大椿 裕子(関西学院大学障がい学生支援コーディネーター)


◆いまの仕事と向き合うことで、次につなげる社会をつくりたい ~ 一人で始めた継続雇用を求めるたたかい ~

 現在私は、大学で障がい学生支援コーディネーターとして勤務している。障害のある学生が、障がいのない学生と出来る限り同等の授業を受けられるよう、学ぶ環境を整えるのが私の仕事である。
 例えば、聴覚障がい学生は授業の内容を文字化して通訳する要約筆記やパソコンテイク等の情報保障がなければ、聴き取ることが出来ない授業を前にただ座っているだけだ。身体介助が必要な肢体不自由の学生は、学内での支援以前に通学の介助がなければ大学にたどりつくことも出来ない。発達障がいのある学生には、個別の障害特性に合わせた対応が求められる。入学を許可されても、彼らが学ぶ環境にたどりつくまでにはいくつもの壁がある。
 2008年度、日本学生支援機構(旧育英会等・以下JASSO)が行った『大学、短期大学及び高等専門学校における障害のある学生の修学支援に関する実態調査』によると、回答校数1218校のうち、全学生数に対する障がい学生の在籍率は0.20%という結果が出ている。その圧倒的な少なさに障がい者が抱える現実を見る。
 しかし昨今、障がいのある学生の受け入れに対する大学側の姿勢は大きく変化してきた。かつて障害のある学生が受験拒否に合うことや、合格はしたものの「自助努力」で大学生活を送ることを大学側と約束させられることはよくあった。しかし現在、「入学を許可した以上、すべての学生に教育上の情報を同等に保障するのが大学の義務である。」という考えが主流となり、障害のある学生への支援の充実度が大学評価のひとつとして認識されるようになってきた。
 それにともない徐々にではあるが、各地の大学で障がいのある学生への支援を行う専門部署が設置され、コーディネーターが配置されるようになった。社会福祉分野の学位や社会福祉士資格、手話通訳等の専門技能を応募資格にあげる大学が多く、障がい者支援に関するある種の専門性が求められ職種であると思われる。
 その一方で、全国にいる障がい学生支援コーディネーターの多くが、最長3年~5年の有期雇用で働いている。また、コーディネーターの多くが女性であることも特徴的だ。非正規と言えど、実質的な現場の運営はコーディネーターに任されていることが多く、現場のことを考えると安心して妊娠することも出来ない。非正規の女性が妊娠するということは、職を失うことに限りなく等しい。
 このように大学現場もまた非正規職員に依存し、雇い止めが横行している現実はあまり知られていない。私自身も2010年3月末をもって雇い止めとなる「期限付契約職員」という立場である。給与は正職員に準じた額が支給されるものの、1年ごとの更新で最長4年まで、退職金なしという契約で働き始めた。契約終了まで残り数か月、失業という現実は私の目前にある。
 障がい学生支援コーディネーターという職種をあらかじめ有期雇用とすることにかねてより疑問を抱いていた私は、個人で加入できる大阪教育合同労働組合(以下教育合同)に入り(勤務先の大学には非正規職員が加入できる職組はない)、継続雇用を求め今年3月より大学側と団体交渉を行っている。しかし大学側には継続雇用の意思は全くない。期限付契約職員の規定が労基署に未届けであった違法性を指摘しても「有効である。」の一点張りで、その根拠を論じる誠実さもない。一方的に団交打ち切りを言い渡された今、不当労働行為救済申立を行い、引き続き継続雇用を求めた運動を続けているが、大学側の姿勢は頑なだ。
 大学側は「有期雇用であることに納得して契約したのだから、あなたの自己責任だ。」と言う。しかし今この国で、障がい学生支援コーディネーターとして働きたいと思い続けることは、「自己責任だ。」と言われながら非正規で働き続けるという現実を受け入れることを意味している。
 人をケアする仕事、とりわけ福祉従事者の待遇が冷遇されるのはなぜか。私達の仕事は、誰でも出来る取替え可能な仕事なのだろうか。支援に携わる者達の生活が不安定であれば、それは必ず障がい者をはじめとする様々な社会的弱者とその家族の生活を圧迫していく。自らの不安定な状況を「仕方ない」と諦めることは、支援を必要とする人々の生活が不安に曝される状況を前に無力になることだ。それって本当にワーカーとしての仕事を全うしたと言えるのか?この自分自身への問いが、継続雇用を求める運動の根幹にある。
 団交を考えた時、数人の信頼出来る教職員に相談したが、彼らの答えは一様に「止めた方がいい。大学の決断は変わらない。」というものだった。労働組合、労働運動に対し敬遠する姿勢も垣間見られた。経験を重ねた人材を継続雇用する方がメリットがあると内心思っていても、その矛盾した状況を変えることは最初から諦めている。その無力感に自分が巻き込まれてしまうのだけは嫌だった。
 その思いから教育合同の扉を叩いたのが今年の2月。たっぷり3時間話を聞いてもらった後、帰り際、専従スタッフの男性にこう言われた。「あなたの時には変わらないかもしれない。でも次の人の時には変わるかもれしない。それが労働運動だよ。」この時、私の問題は私個人の問題に留まらないことを知り、私の決断と行動が未来へとつながる変革を生む可能性を感じた。その瞬間、私の中で団交への意思は固まった。大げさかもしれないが私の中にひっそりとあった、「社会を変えたい」という欲求が、彼の言葉に見事に反応したのだ。
 現在職場には、私の運動を表だって応援してくれる教職員はいない。けれども障害のある学生や、彼らの支援に携わる学生スタッフ、そして保護者からの、私の身を案じ継続雇用を求める声が支えとなっている。
 運動を通して、私にとってソーシャルワーカーとして働くとはどういうことか、そのことを問い直す機会を得た。それと同時に、ロストジェネレーションと名づけられた世代の私達だからこそ、次に続く若い世代にどんな社会をつなげていくのか、本気で向き合える力があると思っている。

『女性としごと』No.50(労働大学出版センター,2010)掲載]

「大学までもあっさり首切り」

■大学までもあっさり首切り
 (2009年4月7日『朝日新聞』朝刊22面[声])
  大学職員 大椿 裕子
    (神戸市長田区 35)
 有期契約の撤廃を訴え、京都大で無期限ストを行う2人の非常勤職員の姿に、1年後の我が身を重ねてしまう。
 私は障害のある学生の支援を担うコーディネーターとして、私立大に勤務している。雇用期間は最長4年まで。今年度末に雇い止めとなる。継続更新の意思は今のところ大学側にはない。
 大学も一定数の障害学生が毎年入学することを想定し、恒常的に必要な業務と判断したのだろう。にもかかわらず、その大学に応じた支援方法を定着させるスキルと経験を重ねたコーディネーターを、数年ごとに人だけ入れ替えるという方法が、大学にとって、とりわけ障害学生にとってどのようなメリットをもたらすのか。私は理解に苦しむ。
 ロスジェネ世代の私は思う。大学現場もまた、正職員の採用を減らし、非正規雇用者に依存している。努力し、成果を上げても評価されず、あっさりと首を切られる。こうして、若い人を育てないこの国に未来はあるのだろうか。
 雇い止めをする大学に勤務する非正規雇用の人たちに呼びかけたい。あきらめる前に、大学を超え、連帯することが今必要なのではないか。▲

「非正規労働に支えられる大学――大学における男女共同参画の課題」

★ → http://wan.or.jp/modules/articles0/index.php?page=article&storyid=30

伊田久美子さん(大阪府立大学人間社会学部教授)によるコラムです。