「有期雇用――差別的な脱法行為に規制を」

■有期雇用――差別的な脱法行為に規制を
 (2010年3月19日『朝日新聞』東京版朝刊17面[私の視点])
   大椿 裕子[おおつばき・ゆうこ]
   (関西学院大障害学生支援コーディネーター)
 有期雇用が大学に広がっている。私も関西学院大を3月末に雇い止めとなる1人だ。京大で有期雇用撤廃無期限ストをする非常勤職員2人らと2月末に大阪で「なんで有期雇用なん!? 大学非正規労働者の雇い止めを許さない関西緊急集会」を開催した。非正規労働者ら100人が北海道、関東、東海からも呼びかけに応じて集まった。
 数年で一律に雇い止めとなる有期雇用は私立大では1990年代から始まり、国立大にも04年の法人化以降その波が押し寄せた。8割以上が女性で女性労働の搾取の問題でもある。今では20代・30代の女性・男性が置かれる当たり前の労働環境になってきた。
 私の雇用は最長4年とされて、障害のある学生の支援を担うコーディネーターとして勤務している。雇用期間が4年で終了することに疑問を抱いて個人加入できる労働組合に入り、昨年から大学側と計6回に及ぶ団体交渉をしてきた。大学側に継続雇用する意思は全くなく、団交は決裂。このままでは3月末解雇は避けられない。
 毎年、一定数の障害学生入学を見込み、支援する専門部署を設置した以上、業務は今後も継続する。有期雇用とする根拠を尋ねても「新しい知識と技術を持った人材を4年ごとに刷新するのが本学の重要な人事政策」と繰り返すのみ。「有期雇用であることに納得して契約したのだから、それは自己責任である」と言う。「納得して契約した」に私は強烈な違和感を持つ。全国で働く障害学生支援コーディネーターのほとんどが3~5年の有期雇用だ。私たちに有期雇用以外の選択肢は初めから与えられていない。
 最初は、確かに有期雇用と分かって契約したのは私だと自分を責め、「私は不当な扱いを受けているのではないか?」という疑問や怒りを封じ込めていた。何度となく心が揺れ動きながら「そもそも、恒常的な業務を有期雇用にしていること自体が問題だ」という確信にたどりつくまでには多くの時間が必要だった。
 数年ごとに雇い止めで人を入れ替えるのは、反復更新による更新期待権が生じないようにする方法だ。集会で基調講演をお願いした脇田滋・龍谷大教授は、有期雇用は労働契約法16条「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用[らんよう]したものとして、無効とする」に反する脱法行為と指摘する。正規職員と比べものにならぬ低賃金で働かされる差別的な待遇を撤廃するためにも、法的な規制と抜本的な制度の組み替えが急務である。
 人を育てず、働く力を貧困化させる有期雇用のシステムを、次の世代に引き継がないためにも、今私たちは声を上げていかなくてはいけない。▲

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