東京都の臨時職員21年間雇用の問題

■臨時職員で21年間雇用 東京都 5カ月働き1カ月失業
 (2010年9月29日『東京新聞』朝刊[社会])
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2010092902000030.html
 東京都が、六十代女性を短期や季節的な業務に従事する臨時職員として繰り返し雇用し、同一施設の図書室で司書業務に二十一年間就かせていたことが分かった。都の内規で、臨時職員は雇用期間を二カ月ごとに細切れに更新するため、健康保険や雇用保険の適用も受けられない仕組みになっているという。
 二十八日の都議会本会議で、共産党の大島芳江議員がこの女性の事例を挙げて「都がワーキングプア(働く貧困層)を作り出している。社会保険逃れだ」と批判。臨時職員の待遇改善を求めた。
 女性によると、臨時職員として一九八九年から司書業務に従事。臨時職員の基準を満たすよう、五カ月働いては一カ月失業し、再び五カ月働く形で雇用期間を更新していた。一カ月に十二日間の勤務で、日給は交通費込みで八千円だった。
 女性は本紙の取材に「臨時ではなく、専門知識も必要な恒常的な仕事だった。二十一年続けたが、法の谷間で社会保険の適用すら受けられず、屈辱的だった」と話した。
 都は答弁で「臨時の職は業務の繁閑を考慮し、必要に応じて設置しており、都の要綱に基づき適切に対応している」と述べた。▲

■東京都:20年以上「臨時職員」 2カ月ごとに契約更新
 (2010年9月29日『毎日新聞』東京朝刊)
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20100929ddm041010009000c.html
 東京都の施設で臨時職員として司書をしてきた女性(66)が、契約更新を繰り返して結局、20年以上も勤めていたことが分かった。臨時職員は、交通費や諸手当の支給がなく、地方公務員の医療保険にも加入できない。都は「20年も臨時で働いた人がいたかは確認できないが、いたとしても法的な問題はない」としているが、法律家からは「労働者の権利を守る多くの法を無視した行為だ」と批判の声が上がっている。
 女性は都立施設内の図書室に司書として勤務。専門書や自治体の統計書などを管理し、職員への貸し出しや資料整理などの仕事を一手に引き受けていたという。しかし、臨時職員に関する都の要綱は「1回2カ月の勤務で、やむをえず更新する場合も連続雇用期間が6カ月を超えることができない」などとしている。このため、女性は2カ月に1回契約を更新。近年は、5カ月働いて1カ月休むという勤務形態を続けていたという。
 女性は「長年、2カ月ごとに契約を交わすことに疑問を感じていたが、やりがいもあったし、仕事を失いたくないので続けていた」と話している。
 都には約600人の臨時職員を雇用している局もあり、同様の状態にある「臨時職員」は他にもいる可能性がある。
 労働問題に詳しい弁護士は「臨時とは言えない継続的な仕事を任せながら、20年も社会保険のない不安定な雇用状態を続けるのは極めて問題だ」と指摘している。【田村彰子】▲

■都:20年以上雇用の臨時職員について説明 「社会保険逃れでない」 /東京
 (2010年9月29日『毎日新聞』東京版)
http://mainichi.jp/area/tokyo/news/20100929ddlk13010257000c.html
 都が20年以上も継続雇用している臨時職員がいる問題が、都議会の代表質問で取り上げられた。共産党の大島芳江議員が「社会保険逃れのために雇用期間を2カ月で細切れにするようなやり方はやめるべきだ」と指摘したが、都側は「臨時の職の性格を考慮して任期を定めている」として、社会保険逃れではないと説明した。
 大島議員は、臨時職員には交通費も支給されないことなどを例示し、「都がワーキングプアを作り出している」と批判したが、都側は「通勤費も含めて算定した賃金だ」としたうえで、「個々の職務内容や業務量等を十分に勘案した上で、的確に役割分担を行い、スリムで効率的な執行体制を確保している」とし、臨時職員の雇用状況に問題はないとの姿勢を強調した。【田村彰子】▲

「有期労働契約研究会報告書」について

■「有期労働契約研究会報告書」について
~締結から終了にわたるルールに関する論点・課題を提示~

 (平成22年9月10日/労働基準局労働条件政策課)
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000000q2tz.html

有期労働契約研究会報告書

■有期雇用:「一定の規制が必要」厚労省研究会が報告書で
 (2010年9月10日20時57分『毎日新聞』)
http://mainichi.jp/select/biz/news/20100911k0000m040080000c.html
 厚生労働省の有期労働契約研究会(座長・鎌田耕一東洋大法学部教授)は10日、有期雇用について、季節的業務に限定するなどの一定の規制が必要との報告書をまとめた。労働政策審議会で検討を進め、11年度中のルール作りを目指す。
 報告書では▽有期労働契約締結の「合理的な理由」の義務づけや、季節的・一時的業務への限定▽一定の更新回数や年数を超えた場合、無期労働契約とみなすなどの法的規制▽現在明確な規定のない契約期間満了後の雇い止めの規制--などがルール作りの方法として考え得るとしている。また、日本の有期契約労働者の雇用保護の弱さを指摘。新規雇用の抑制や企業の海外移転の加速などの影響が生じないよう配慮しつつ、規制内容を検討すべきだとした。▲

「<はたらく>“公務員”でも不安定 自治体の臨時・非常勤職員」

■<はたらく>“公務員”でも不安定 自治体の臨時・非常勤職員
 (2010年9月3日『中日新聞』【暮らし】)
http://www.chunichi.co.jp/article/living/life/CK2010090302000047.html
 全国の自治体で、臨時や非常勤の職員が増えている。行革に伴う正規職員の削減などが背景にあり、労働に見合わない低賃金を強いられている場合も多い。だが、税金の使い道に注がれる市民の視線は厳しく、“官製ワーキングプア”の悲哀は伝わりにくいのが実情だ。 (片山健生)
 愛知県西部の自治体の清掃部門に在籍する男性(45)は、昨夏のボーナスシーズンに市民から浴びせられた一言が忘れられない。
 「公務員はたくさんボーナスをもらえていいよな」。街中のごみ集積場でペットボトルをパッカー車で回収しているとき、通り掛かった年配者が、うらやみとも嫌みともつかない口調で発した。
 だが男性は、日給一万円で働く一年契約の臨時職員。勤務のない年末年始は生活費の工面に頭を悩ませ、年度末には契約が更新されるか気に病む境遇だ。
 同じ作業服で、同じ仕事をしている正規職員と違い、ボーナスにも縁はない。「反論してこじれると次の集積場に着くのが遅れると思い、苦笑いしてその場を離れましたが…」と振り返る。
 契約更新を重ねて勤務は六年目に入るが、日給は百円ほどしか上がっていない。年収は二百五十万円に届かず、妻のパート収入がなければ生活が成り立たない。前職の土木作業員時代に痛めた腰の再手術を近く控える。「貯金はないので、百四十万円ほどの費用は借金して工面するつもりです」
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 総務省によると、全地方自治体の非正規職員は二〇〇八年四月時点で四十九万八千人に上り、〇五年の調査より四万二千人増えている。正規職員は同期間で十四万三千人減っており、削減分の一部を安価な労働力で補ったとみられる。
 全日本自治団体労働組合(自治労)は〇八年、非正規職員について全自治体にアンケート。千百四自治体(所属する非正規職員数約三十四万人)から回答を得た。日給・時給制職員の時間当たりの賃金は千円未満が73・8%=グラフ、月給制職員の賃金は十六万円未満が58・7%。年収二百万円未満のワーキングプア(働く貧困層)は、八割前後に上るとみられる。
 一年以下の契約期間がほとんどだが、継続勤務一年以上の人が60・3%。三割近くは「常勤職員と同じ」勤務時間だが、昇給制度がある人は一割もいない。低賃金で常勤的な働き方をしていることが分かる。空いた時間で別の仕事をしようとしても、兼職が制限されている場合が多い。
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 労働政策研究・研修機構の荻野登・調査解析部次長は「自治体予算が縮小する中、非正規職員を使わなければ回っていかないのが現実で、正規職員と同じ勤務内容や役割を求めている自治体は多い」と語る。非正規職員の賃金は低く抑えられ、手当を制限した地方自治法の規定などを理由に、通勤手当が支給されない事例もあるといい、「同じ労働には同じだけの賃金を支給する制度が公務職場にも必要」と訴える。
 三重県全自治体を対象に毎年、非正規職員に関するアンケートをしている県労働組合総連合の芳野孝副議長は「公務員の非正規職員の低い賃金が、ハローワークなどの求人票で公開される民間企業の賃金の引き下げにつながっている」と指摘。民間労働者にとって、官製ワーキングプアは、対岸の火事ではないとの見方を示している。▲