「非正規の厚生年金加入拡大 負担増の業界「反対」大合唱」

■非正規の厚生年金加入拡大 負担増の業界「反対」大合唱
 (2011年10月28日『東京新聞』朝刊[政治]
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2011102802000038.html
 パートや派遣社員など、非正規労働者の厚生年金と健康保険への加入拡大を検討している社会保障審議会(厚生労働相の諮問機関)特別部会は二十七日、関係団体の意見聴取を終えた。厚生労働省は来年の通常国会への関連法案提出を目指しているが、新たな負担を負う業界は強く反発している。 (上坂修子)
 近年、非正規労働者は増え続け、二〇一〇年で全労働者の34・3%を占める。政府・与党は非正規労働者も厚生年金、健康保険に加入しやすくし、手厚い年金給付や医療サービスを受けられる環境を整えるため、六月に決定した社会保障と税の一体改革案に、加入要件の緩和方針を盛り込んだ。これを踏まえて、特別部会が検討を進めてきた。
 現行では、非正規労働者の厚生年金への加入要件は、労働時間が正社員の「四分の三(週三十時間)以上」で、健康保険も同様。要件を満たさない人は、自営業者らが入る国民年金、国民健康保険に加入している。
 特別部会は、この要件を、週二十時間以上に緩和する案を軸に検討している。実現すれば、新たに四百万人が厚生年金に加入すると推計している。
 厚労省が、月収十万円で現在四十六歳の女性(シングルマザーや自営業者の妻らの場合)をモデルに試算したところ、国民年金から厚生年金に移ると、年間の保険料負担は約八万四千円減る。また、一年間加入すると、将来受け取る年金は生涯で約十七万三千円増加。加入期間に応じ、給付額はさらに増える。
 二十七日の意見聴取で、シングルマザーを支援する全国母子寡婦福祉団体協議会は「母子家庭の母は生計の担い手でありながらパートとして働かざるを得ないケースが多く、社会保険の支えが必要」と要件緩和を支持。自治労も「国民年金に加入しなければいけない被用者は、老後の所得保障については不利だ」と主張した。
 ただ、保険料の半分は雇用主が負担するため、パートを多数雇っている外食産業や流通業界など企業の抵抗は強い。
 特別部会の意見聴取でも、外食産業代表の日本フードサービス協会は「保険料負担で実質的な手取りが減るため、パートの約八割は加入を望んでいない」と反対を表明。日本チェーンストア協会は「デフレの中、企業も価格に(保険料負担を)転嫁できる状況ではない。倒産を避けるため、採用抑制や就労調整をせざるを得ない」と主張した。
 労働者の六割が非正規の全国ビルメンテナンス協会も「保険料負担が増大すればパートの削減や就労時間の抑制にシフトする」と訴えた。
 自公政権下の〇七年、政府は加入要件を週二十時間以上とした適用拡大の関連法案を提出したが、廃案になった。今回も難航は避けられない。▲

日弁連:労働政策審議会労働条件分科会「有期労働契約に関する議論の中間的な整理について」に対する意見書

■労働政策審議会労働条件分科会「有期労働契約に関する議論の中間的な整理について」に対する意見書
 (2011年10月18日 日本弁護士連合会)
http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/opinion/year/2011/111018_2.html

以下の5点が提言されています。注目です。
1 有期労働契約の締結事由は合理的理由がある場合に限られること(入口規制)
2 更新回数・利用可能期間の上限規制(出口規制)をすること
3 確立した判例法理である雇止め制限法理(解雇権濫用法理の類推適用)を法律に明記すること
4 有期契約労働者と正規社員の賃金格差や男女の賃金格差を解消するために同一価値労働同一賃金の原則を法制化すること
5 有期労働契約法制の検討に当たっては、女性労働者の多くが有期契約労働者であり、男女賃金格差及び女性(主に母子家庭)の貧困の主たる要因となっている現状を認識し、また、正確な実態調査に基づく背景事情を分析し、男女共同参画社会の理念を実現する視点に立って、前4項の法制化を早急に進めるべきこと