「「労労対立」越える試み 正社員賃下げ、契約社員賃上げ」

■「労労対立」越える試み 正社員賃下げ、契約社員賃上げ
 (2010年3月11日0時26分 asahi.com[経済を読む])
http://www.asahi.com/business/topics/economy/TKY201003100499.html
(【写真】回収してきた紙ごみを搬送車から下ろす春江の社員ら。正社員と契約社員が一緒に作業する=東京都江戸川区)
 連合が、非正社員を含むすべての労働者の条件改善を初めて目標に掲げた今春闘。非正社員の処遇向上には、利害が対立することもある正社員の理解が欠かせない。東京都内のごみ収集会社では、長い時間をかけて両者が歩み寄り、同じ労働条件を実現した。
 ごみ収集運搬・リサイクル大手「春江」(東京都)は16日から、従業員の大半を占める作業員について、休憩時間と固定残業を含む拘束時間を、正社員か契約社員かにかかわらず10時間半に統一する。
 これまでの制度では、賃金が低い契約社員の拘束時間が1時間長い。新制度では正社員の固定残業を30分延ばし、契約社員は30分短くする。日給は変えないため、実質的に正社員は「賃下げ」、契約社員が「賃上げ」になる。
 都内23区で自治体や企業のごみ収集を手がけ、正社員と契約社員を合わせて約150人の作業員が働く。仕事は搬送車の運転やごみの積み下ろし、仕分けなど。仕事内容は同じなのに契約社員は正社員と区別され、もともと拘束時間に2時間の差があった。
 1999年に労組ができると、翌年にはすべての従業員が加入するユニオンショップ協定が結ばれた。労組が中心になって是正に取り組み、01年に拘束時間の差を1時間に短縮。そして今年、同一条件を実現した。
 島崎裕久委員長は「会社や正社員から反発を受けながらも信頼関係を築いた結果。それでも10年かかった」と振り返る。作業員の中に占める契約社員の割合が、約10年前の25%から67%まで増え、契約社員の声を無視できなくなったことも背景にある。
 作業が効率的になるように収集ルートを見直すなど経費削減で経営側に協力。正社員の理解を得るために、55歳以上になると2割減給される就業規則の規定の廃止を同時に実現した。経営側が人件費増につながる要求をあえて受け入れたのは「意識も統一されて生産性が高まる」(白輪地義明専務)からだという。
 路面電車で知られる広島電鉄(広島市)の労使は昨春闘で、契約社員の「正社員化」で合意した。契約社員の乗務員は労働時間が30分長く、昇給も退職金もなかった。3年越しの労使交渉が決着したのは、正社員が非正社員のために給与を削ることで歩み寄ったからだ。給与削減に10年かけるなどの緩和措置や5年間の定年延長などで人件費が3億円以上増える計算だが、経営側が受け入れを決断した。
 パートとの共闘など、徐々に非正社員と連携する動きは出ており、連合は「正社員と非正社員を対立させる労労対立でとらえず、経営側も譲り合う交渉が必要だ」(幹部)と強調する。ただ、正社員のベア要求がままならない状況で、春江や広島電鉄のような動きは少ない。(宮崎健)▲

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