■最低所得保障「ベーシック・インカム」 普及へ「日本ネット」設立
(2010年03月24日(水)『京都新聞』)
http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P20100324000022&genre=G1&area=K00
すべての人に最低所得を保障する概念「ベーシック・インカム」の普及や学術的な研究の推進を目指す「ベーシック・インカム日本ネットワーク」の設立集会が27日午後1時15分から、京都市上京区の同志社大新町キャンパスで開かれる。
■大学教授ら設立、同大で27日集会
ベーシック・インカムの世界ネットワークは2004年に設立された。米国やオーストラリア、欧州の各国などでも、研究者や市民団体のメンバーなどでネットワークが組織されている。日本でも、京都府立大公共政策学部の小沢修司教授、同志社大経済学部の山森亮准教授たちが中心となって研究会を重ね、約20人の研究者で日本ネットワークを設立することにした。
年1回の大会や定期的な研究会を開き、ホームページからの情報発信なども行うことにしている。
■社会保障の仕組み問う
設立集会では、障害者インターナショナル日本会議の三澤了議長をはじめ障害者・女性団体のメンバーがベーシックインカムへの期待を語る。26、27日には同志社大で、世界の研究者を招いてシンポジウムも開かれる。
山森准教授は「今の日本では、障害者や働くことができない人たちの一部にしか所得保障ができていない。ベーシックインカムの議論によって、手詰まりになっている現在の社会保障の仕組みを問えるのではないか」と話している。
■一律給付に賛否交錯
ベーシック・インカムは「基本所得」とも呼ばれる。貧しい人も富める人も、働く人も働かない人にも、すべての個人に無条件で生活に必要な所得を保障する構想だ。
シンプルな発想で歴史も古いが、先進国で失業が慢性化し、年金や社会保険といった福祉国家の社会保障施策が行き詰まる中、にわかに注目を集めている。政府が国民全員に個人単位で、無条件で生活できる額を現金給付する。代わりに生活保護や失業保険のような制度は不要になる。
1960年代の米国の公民権運動や英国の女性運動でも提案されて世界に広がり、欧州の一部の国では政府レベルでも議論されている。
ベーシック・インカムの議論が幅広い関心を集めるのは、政策的な実現可能性だけでなく、一律給付という単純な要求だけに、働くことへの価値観や公平な分配とは何かを問い直す「ものさし」になる点にある。
「重労働をする人がいなくなるのでは」「ばからしくて働かない人が増えるのでは」「財源は」といった批判もあるが、個人給付であることから、家事労働や家族介護といった無償労働、障害者福祉、生活保護、最低賃金などの問題点も浮き彫りにする。
新自由主義や社会主義、フェミズムなどの立場を超え、ベーシック・インカムへの賛否が交錯する状況が生まれている。▲
★BIJN 設立集会・前夜祭・設立記念シンポジウム
→ http://basicincome.gr.jp/a/20100326.htm
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