「賃金格差を解消した広島電鉄の試みが注目されています」

■働くナビ:賃金格差を解消した広島電鉄の試みが注目されています。
 (2010年5月10日『毎日新聞』東京朝刊)
http://mainichi.jp/life/job/news/20100510ddm013100028000c.html
 ◆賃金格差を解消した広島電鉄の試みが注目されています。
 ◇契約社員を正規雇用 一部賃下げ/定年延長で生涯賃金増
 広島県内で路面電車や路線バスを運行する広島電鉄(本社・広島市、約1300人)は昨年10月、契約社員150人の正社員化を実施し賃金体系を一本化した。一部ベテラン社員は賃下げとなったが、同じ職場で働く人たちの賃金格差を解消した試みとして注目されている。
 バス運転手、中川良二さん(29)は08年4月に契約社員として入社。基本給は22万6000円。雇用契約は1年更新で、ボーナスは正社員の約半分。正社員に支払われる経験・年齢給や退職金はなかった。
 正社員となった新しい賃金表では、基本給は21万円に下がったものの、無事故手当など各種手当がつくため、月々の手取りはほとんど変わらない。ボーナスが倍以上に増えたため、年収は40万~50万円のアップとなる見込みだ。中川さんは昨年初めに結婚したばかり。「(賃下げになった)ベテランの正社員には申し訳ない気持ちですが、自宅購入も夢ではないなという気持ちがわいてきました」と話す。
     ◇
 広島電鉄は01年度から運転職に契約社員制度を導入した。04年からは勤めてから3年後に正社員に登用する制度を導入したものの「正社員2」と呼ばれ、正社員とは区別されていた。退職金や各種手当など条件面は契約社員から変更がなく、違うのは定年まで働けるというぐらいだった。
 転機が訪れたのは06年末。会社と労働組合が賃金体系の見直しで基本合意した。「契約社員と正社員2の割合はあと10年もたてば正社員と逆転し、社員全員が契約社員になるかもしれないという危機感があった」と佐古正明・同社労働組合委員長(49)は振り返る。
 ただ具体的な賃金体系の見直しは難航した。正社員化と賃金体系見直しで労使が合意できたのは基本合意から2年以上が過ぎた昨年3月だった。
 見直しによって、契約社員と正社員2の約300人は年収がアップし退職金も出るようになった。ベテラン正社員の約100人は最大で月5万円の賃下げとなるが、賃下げは10年かけて行う激変緩和措置を導入。さらに60歳定年を65歳に延長し、賃下げとなるベテラン正社員も生涯賃金は上がるようにした。これまでの再雇用制度に比べ、年収で150万~200万円は上がるという。
 正社員化によって会社側の人件費は年3億円以上の負担増となった。交渉を担当した椋田昌夫・同社常務は「会社と労組は車の両輪。(正社員化は)安定した職場の維持と安全運行のための投資」と話している。【有田浩子】
 ◇ユニクロでも3000人
 ここ数年、優秀な人材確保などを目的に非正規から正社員に転換・登用する企業も目立ち始めた。08年4月から施行されたパート労働法が正社員への転換を企業に義務づけたことなど規制強化が進んでいることも背景にある。
 07年3月、ユニクロは約2万2000人の非正規社員のうち、一定の業務水準に達した社員を転勤を伴わない正社員に登用すると発表。これまでに約3000人が正社員に登用されている。また段ボール最大手のレンゴーは09年4月、国内工場で働く約1000人の派遣社員を一斉に正社員化した。派遣期間の上限(3年)を順次迎えるなかで、優秀な社員を継続雇用するためだった。
 労働政策研究・研修機構の荻野登・調査・解析部次長は「企業にとってコスト増の懸念はあるものの、意欲や能力の高い人材を見極めることができる」と分析する。▲

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