■非正規労働 人への投資こそ大切だ(5月4日)
(2010年5月4日『北海道新聞』社説)
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/editorial/229481.html
処遇改善の手がなかなか届かない。それが非正規労働者の置かれた状況だろう。今年のメーデーでもパートや派遣などで働く人たちが厳しい実態を訴えた。
今春闘で連合は取り組みの対象をすべての労働者に広げた。昨年より5割多い3千余りの傘下労組が非正規のための要求などを掲げている。
しかし壁は厚い。パートの時間給に関しては、引き上げの回答を得たのは1割強にとどまる。北海道でも「ゼロ回答」の苦戦が続いている。
正社員の賃上げもままならないのに非正規までの余裕はない。それが企業側の言い分のようだ。
とはいえ人材こそ企業の力だ。人への投資を抑えてばかりでは成長の基盤を損なうことになりかねない。
非正規はいまや働く人の3人に1人を占める。なかでも北海道は36・6%と地域別で最も割合が高い。
これほど増えたのは企業にとって安い賃金で、雇用調整にも使える労働力だからにほかならない。労働規制の緩和という後押しもあった。
そうしたなか、あぶり出された問題がある。正社員が非正規に置き換えられるにつれ、職能訓練が十分に施されない労働者が増えたことだ。
15~24歳の世代を見ると、働く人のうち非正規の占める割合は45・0%に達している。限られた職責や雇用期間では能力を高めたり、職歴を積んだりすることは難しい。
10年後、20年後にこうした若年層が働く人の中心的な世代となる。とすれば企業、ひいては産業全体の力が保てるのかどうか。
人件費を削減して国際競争力を高める。それが非正規を増やす狙いだった。働く人をそのための手だてとしか扱わないというのでは、かえって肝心の競争力を失いかねない。
雇用情勢が悪化するなかで、安全網の整備や再就職支援の充実が急がれる。国会で審議中の労働者派遣法の改正も実現すれば、雇用の安定には一歩前進とはなるだろう。
いま併せて考えねばならないのは人材をどう育てるかである。
政府は昨年末の経済成長戦略の基本方針に「社会全体で人材育成を行う」と明記した。問われるのは、その具体的な道筋だ。
機械化さえすれば利益が増えるという時代ではない。企画力や開発力、独自の技術で市場を切り開くことが求められている。
企業が培ってきた力を、いかに世代を超えて引き継ぐかが大事になる。そのためには、長期で安定した雇用を基本に据えるべきだろう。
非正規の処遇を改善し、正社員への切り替えを図る。将来の雇用のあり方を見据えながら、その方策を政労使で真剣に考えるときである。▲
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