■有期という働き方(No.286) 働き方が同じでも正社員と待遇に格差
(2009年11月29日『東京新聞』[生活図鑑])
http://www.tokyo-np.co.jp/article/seikatuzukan/2009/CK2009112902000133.html
働く人の3人に1人は派遣やパートタイムなど非正規労働者です。非正規雇用の大半は期間が定められた有期契約です。不安定な雇用にもかかわらず、仕事の内容は正社員と変わらない人が半数近くもいます。昇進や賃金でも正社員と比べ格差があります。
非正規で働く人は増加傾向にあり、二〇〇八年には千七百六十万人にものぼりました。〇九年は雇用調整が進展し、労働者数が減少したものの、非正規比率は30%を超えています。
非正規の働き方でもっとも多いのはパートタイムです。このため、非正規というと労働時間が正社員に比べ短く、仕事量も少ないなどと思われがちです。
しかし、厚生労働省の「有期労働契約に関する実態調査」によると、有期契約労働者の40%以上が正社員と同じ働き方をしているとみられます。
正社員と同じ働き方をしていても、正社員の80%以上が昇進するのに対し、有期契約労働者は約20%しか昇進しません。また、賃金水準も約70%が正社員未満でした。
このため、賃金水準やキャリアアップしないことへの不満が募り、「正社員にしてほしい」という希望も多くあります。
●雇用不安で生活不安
事業主は、有期契約労働者を雇用する理由について「業務量の変動に対応するため」「業務量に応じて雇用調整するため」など、一時的なものであるとの答えが多くなっていました。その一方、正社員と同じ働き方が増えているため、有期労働者を雇用する半数以上の企業が「雇わないと事業が成り立たない」としています。
しかし、昇進や賃金水準については正社員と格差を設けているうえ、正社員への転換制度がある企業も半数に達しませんでした。雇い止めについても「するつもりはない」というのは約13%にすぎません。
有期契約労働者の一回の契約期間は平均で七・八月。五回程度の更新をし、平均三・二年勤めるという働き方です。
また平均年齢は約四十歳で、労働者の41%は世帯主でした。年収は百万円超二百万円以下が31%で最も多く、次いで二百万円超三百万円以下の順でした。
また、金融危機以降、派遣切りに代表される雇用調整は非正規労働者中心に行われました。一家を支える世帯主でありながら、不安定な有期契約では、生活も不安定になっているのではないかとの懸念が強くもたれています。
●均等待遇へ法制化を
有期労働契約については、契約期間の上限は原則三年です。しかし勤続年数や契約回数については上限の定めがありません。このため、契約期間の平均に見られるように短期間の更新を繰り返す労働者が大半です。労組への加入率も低く、労働条件の改善も進んでいません。
欧州連合(EU)などでは有期労働契約について、契約期間、更新の制限を設けているほか、正社員との均等待遇を定めています。有期契約労働について、わが国もEU並みの労働者保護に基づいた法制化などを求める声が強まっています。
制作・亀岡秀人▲
■有期雇用のあり方(No.241) 日本も均等待遇の検討を
(2009年1月18日『東京新聞』[生活図鑑])
http://www.tokyo-np.co.jp/article/seikatuzukan/2009/CK2009011802000152.html
非正規の雇用問題が深刻化しています。とくに、派遣や期間従業員など有期という働き方の不安定さが浮き彫りになっています。欧州連合(EU)ではすでに有期雇用について正社員との均等待遇を法制化しています。わが国は有期雇用のあり方をどのようにしていけばよいのでしょうか。
有期労働契約(雇用期間は原則三年)について、日本の労働契約法では「必要以上に短い期間を定め、反復更新しないよう配慮しなければならない」との努力規定にとどまっています。
二〇〇八年三月から実施された「有期労働契約の締結、更新及び雇い止めに関する基準」では、有期雇用者の雇い止め(期間終了による契約打ち切り)について、三十日前までの予告を求めています。しかし、予告の対象となる労働者は、有期労働契約を三回以上更新しているか、あるいは一年を超えて継続して雇用されている場合などに限定されています。
●安易な解雇は違法
雇い止めに関する裁判所の判断は、使用者側の経済的事情による雇い止めを認めた例がある一方、正社員と同様に解雇に関する判例に基づき、雇い止めを認めなかった例もあります。
さらに、期間途中の契約打ち切りについて、労働契約法第一七条で「やむを得ない事由がある場合でなければ、契約期間中に解雇されない」趣旨が明記されています。
やむを得ないとは、予測できない天災によって事業の継続ができなくなったことや、労働者がけがや病気等で働けなくなったときなどで、期間の定めのない労働者以上に、厳格な理由が必要とされています。
経済的事情で整理解雇を行う場合でも、裁判所の判例に基づき「人員削減を行う理由があるか」「希望退職など解雇を回避する努力を行ったか」などの原則があり、有期雇用にも当てはまります。安易な解雇は違法との指摘があります。
●契約条件厳しいEU
EUは、一九九九年の「EU有期労働指令」で、有期労働というだけの理由で正社員よりも不利な扱いを受けないという均等待遇の原則を設けています。また、合理的な理由がなければ有期雇用契約を結べないとされています。
有期雇用で問題になる反復更新について(1)反復継続する有期雇用契約の継続期間の上限を定める(2)契約の更新回数の上限を定める-など最低限の基準を定め各国が法制化しています。
例えば、フランスとドイツは、正当な理由がなければ、有期雇用契約を締結できません。フランスでは更新は一回までで、期間は最長二十四カ月、ドイツでも原則二年以内に三回までです。オランダでも期間は三年までで更新は二回が上限です。
国際労働機関(ILO)の「使用者の発意による雇用の終了に関する勧告」(第一六六号、条約では一五八号、日本未批准)では、有期雇用は労働者の利益を考慮し、合理的理由のある場合に限定。有期雇用契約を一回または二回以上更新した場合には、期間の定めのない雇用契約とみなすと定めています。
EUの労働法制に詳しい労働政策研究・研修機構の浜口桂一郎さんは「有期労働者など非正規社員の賃金、労働条件、雇用終了について正社員との均等待遇を検討する時期ではないか」と指摘しています。
日本では、経営合理化の一環として、企業は有期労働者を採用、反復更新を繰り返し、雇い止めで解雇の自由化を進めています。期間途中の解雇や雇い止めも含め、有期雇用のあり方を見直す必要がありそうです。▲
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