■改正雇用保険法が成立 非正社員の条件緩和、保険料は増
(2010年3月31日 asahi.com)
http://www.asahi.com/job/news/TKY201003310339.html
非正社員が雇用保険に入る条件の緩和を柱とした改正雇用保険法が31日、参院本会議で可決、成立した。新年度から推計255万人が新たに加入対象になる。一方、労使で負担する雇用保険料率は賃金の1.1%から1.55%に引き上げられる。悪化する雇用保険財政や、なお対象から漏れる労働者をどう支えるのかが、今後の焦点になる。
新たに雇用保険の対象になる人は、労働時間が週20時間以上40時間未満で、雇用見込みが31日以上6カ月未満のパート社員ら。すでに雇用保険に入っている正社員らに比べて失職のリスクが大きいため、雇用保険財政にとっては、保険料収入の増加を考慮しても年間1500億円程度のマイナス要因になる。
完全失業率が5%前後で推移する厳しい雇用情勢の中、雇用保険財政の悪化を少しでも抑えるため、2010年度の保険料率(失業給付分、労使折半)は前年度から5割増える。月収30万円の働き手の場合、保険料負担は1200円から1800円に増える計算だ。1月に成立した09年度2次補正予算では、一般会計から3500億円が臨時に注入された。
雇用保険には、家計の「預貯金」にあたる積立金が08年度末で約5兆6千億円もある。潤沢な蓄えにもかかわらず財政強化を急ぐのは、1995年度に約4兆6千億円あった積立金が、雇用情勢の悪化で02年度に底を突きかけた経験があるからだ。厚生労働省の試算では、10年度には失業給付の支払いだけで7千億円分が減る。
また、生産量が落ち込んだ企業に休業手当を助成する雇用調整助成金が、09年4月~10年2月で6千億円(前年同期は10億円弱)と巨額に上っていることも大きい。雇調金は、事業者負担だけで成り立つ「雇用保険二事業」から支出されており、失業給付部分とは別勘定だが、雇調金の急増で財源が枯渇。失業給付の積立金から4400億円を無利子で貸し付けることになった。不況が長引けば返済が滞ったり、再び支援が必要になったりする恐れもある。
さらに、民主党が11年度の導入を目指している「求職者支援制度」も財政悪化の要因になりうる。雇用保険に入っていなかったり、失業給付が切れたりした失業者に対し、職業訓練中の生活費を月約10万円支給する仕組みで、必要経費は年間5千億円とされている。厚労省は税金で実施するよう求める方針だが、マニフェスト実現の財源確保に苦心する財務省は雇用保険からの拠出を主張するとみられ、11年度予算編成に向けて激しい論議になりそうだ。
今回の改正で雇用の安全網は広がるが、労働時間が週20時間未満の労働者や、65歳以上で職に就いた高齢者は、雇用保険の対象から外れたままだ。「雇用保険は自分の労働で生計を立てている人の安全網」との考えからだが、低賃金のため短時間の仕事をかけ持ちし、合計では週20時間を超しているケースもある。こうした働き手をどう救済するのかも検討課題になる。▲
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