■「直接雇用」なお不安 新派遣法審議入り
(2010年4月16日16時17分『中日新聞』 [社会])
http://www.chunichi.co.jp/s/article/2010041690161519.html
(【写真】派遣法の抜本改正を求める非正規労働者の座り込みで、直接雇用制度の問題点を指摘する阿久津真一さん=14日、東京・永田町の国会前で)
16日から国会で審議が始まった労働者派遣法改正案で、企業側に違法行為があった場合、派遣先企業に労働者の直接雇用義務を課す新制度について、労働者側から「抜け穴だらけだ」と批判が相次いでいる。直接雇用といっても契約期間は短期で終わる場合もあり、労働条件も元のままだからだ。労働者側は「違法派遣の根絶にはならない」と改善を求めている。
「契約期間が限定され、ずっと不安定な立場に置かれてきた。なぜ、改正法に雇い止め禁止の条文を盛り込まないのか」
愛知県三好町(現みよし市)の自動車関連工場の契約を打ち切られたブラジル人男性7人が所属する全日本金属情報機器労働組合愛知地方本部の平田英友執行委員長は、政府案を批判する。
同組合によると、7人はいずれも実態は派遣なのに業務請負に見せかける「偽装請負」だった。男性らは労働組合を結成し、2006年に直接雇用を要求。雇用期間は6カ月の限定だが、業績が悪化した場合を除き原則、更新を繰り返すことを条件に双方が直接雇用に合意した。
だが08年秋からの世界的不況の影響で、男性らは翌年に相次いで契約更新打ち切りを通告された。名古屋地裁に労働審判を申し立てたが、会社側は「人員余剰が拡大される中でやむを得ない」と反論。現在は民事訴訟に持ち込まれている。
こうした派遣労働者の“解雇”が相次いだのを背景に導入される新制度だが、労働者側が問題にしているのは、改正案に盛り込まれた「直接雇用みなし制度」だ。現行法でも3年の制限期間を超えて派遣で働かせた場合、派遣先企業は労働者を直接雇用する義務があるが、改正案は違反対象を拡大。建設・港湾作業など危険業務への派遣や、偽装請負などの違法行為があった場合も直接雇用を義務づける。
だが、直接雇用が実現しても、フランスやドイツと違って、期間社員として有期雇用となるため、雇用期間が過ぎれば、すぐに雇い止めになる恐れが依然として残される。
「違法に働かされている労働者を救ってほしい」。宇都宮市のキヤノン工場で働き、直接雇用の後に雇い止めにあった阿久津真一さん(42)は14日、国会前で、同じように職を失った約20人と法案見直しの声を上げた。「直接雇用を義務づけても、短期で切られるなら救われない」と訴えた。
【直接雇用みなし制度】 フランスでは派遣先が派遣期間制限などに違反した場合、労働者と無期限の雇用契約を結んでいたとみなして社員にしなければならない。ドイツでは派遣会社が無許可営業の場合、派遣先の労働条件で雇用される。日本では2008年、厚生労働省の研究会が導入を提案。財界は「契約や採用の自由を侵害する」と反対したが、違法派遣に歯止めをかけようと、派遣期間内の有期雇用の形で改正案に盛り込まれた。
(中日新聞)▲
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