■厚労省研究会の新雇用政策 構造改革の転換不十分
(2010年7月20日(火)『しんぶん赤旗』)
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik10/2010-07-20/2010072002_01_1.html
厚生労働省の雇用政策研究会(座長・樋口美雄慶応大学教授)はこのほど、「持続可能な活力ある社会を実現する経済・雇用システム」と題する新たな雇用・労働政策の方向性をまとめた報告書を出しました。
報告書では、「正規・非正規労働者の二極化」「少子高齢化の進展」など情勢の変化をあげて、「雇用の質の向上」や女性・高齢者らの労働力化、セーフティーネットの強化などを打ち出しています。
自公政権の規制緩和路線がもたらした雇用破壊と貧困拡大に対応しようという問題意識はうかがえます。
◆提起したのは多様な正社員
しかし、「雇用の質の向上」で提起しているのは、「多様な正社員」です。「正規・非正規労働者の中間に位置する雇用形態」で、「契約期間に定めがない」ものの、「雇用調整できる」というもの。「労働者には細切れ雇用を防止でき、企業にも非正規労働者を中長期的に戦力化することが可能になる」としています。
これは報告書自身、「アウトソーシングの手段として利用され、不安定な雇用形態を増大させることにならないよう十分配慮する必要がある」と指摘するように、新たな不安定労働者を生み出す危険性があります。
一方で、労働者派遣法の見直しや有期雇用のルール改正については「保護の仕組みを強化」などとするだけで具体的内容は示していません。「抜け穴」だらけの政府の労働者派遣法改定案に、“配慮”した格好です。
失業者らへの就労支援、セーフティーネット強化はどうか。
まず必要なのは、失業手当の給付期間延長や給付水準引き上げ、対象者の拡大など雇用保険の拡充です。ところが報告書はこうした課題は取り上げず、「常にモラルハザードの可能性を考慮しなければならない」とします。
◆公的職業訓練強化に反して
職業訓練についても「成長分野の人材育成」などというものの、政府がすすめているのは、雇用・能力開発機構の廃止や全国83カ所の地域職業訓練センターの全廃計画など、公的職業訓練の強化に反する方向です。
正社員についてはリストラ対策や労働時間短縮などを課題にあげています。しかし、これも「関係法令の履行」など現行の枠内にとどまり、実効ある対策を打ち出せません。
政府の「新成長戦略」に沿って福祉・介護分野などでの雇用拡大を強調しています。しかし、同戦略は、大企業の成長を最優先にしたもので、「新しい公共」の名によるNPO(民間非営利団体)の活用など公共サービス縮小と民間まかせがベースです。
民主党政権が「構造改革」路線から脱却できないもとで、報告書も労働者の願いにこたえるには不十分な内容にとどまっています。
大企業に社会的責任を果たさせ、ためこんだ内部留保を還元させて雇用の危機を打開し、労働条件を改善させていくこと、そのために解雇規制や非正規の正社員化や均等待遇、最低賃金引き上げなど、「人間らしく働けるルール」を確立する方向性こそ必要になっています。(深山直人)▲
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