「2400人 今月末で雇い止め 年金記録照合に従事」

■<はたらく>2400人 今月末で雇い止め 年金記録照合に従事
 (2012年3月9日『東京新聞』[暮らし])
http://www.tokyo-np.co.jp/article/living/life/CK2012030902000064.html
 「消えた年金」問題を受け、コンピューター上の年金記録が正確かを紙の台帳と照合する厚生労働省の事業で、作業に従事する人の一割余の約二千四百人が今月末で雇い止めになる。コスト削減のため発注先の業者を絞り込んだためだ。突然仕事を失うことになった人からは「三年は続く仕事だと聞いていたのに」と戸惑いと怒りの声が上がっている。 (稲田雅文)
 名古屋市内の拠点で年金記録の照合作業に当たる女性は二月上旬、突然、会社からこの拠点での業務が三月末で終了するため、雇用契約を延長しないと告げられた。「入札で負けた。業務は他の業者が引き継ぐ」と説明された。“寝耳に水”の話だった。
 女性は情報誌でこの仕事を知り、二〇一〇年十二月に応募。「業務の進み具合にもよるが、三年は続く仕事」と説明を受けた。
 画像情報にした手書き記録を、オンラインの年金記録と突き合わせていく。戦前の記録は、消えかかっていたり、台帳が破れていたりすることもある。記述にも癖があるなどして解読に苦労する。ノウハウ共有のためのマニュアルやルールは刻々と変わった。
 日本年金機構からは三カ月単位で照合する人数が提示され、正確性も求められた。女性は「一人でも多くの人が正しい年金を受け取ってほしい」と、速さと正確さが両立するよう努力した。時給は職種により八百~千円。交通費も出ない。
 コストを理由に雇い止めになることに「四月以降の照合作業の正確性はどうなるのか」と疑問を感じる。厳しい雇用情勢の中、次の職が見つかるかも不安で、見つからなければ雇用保険の失業給付を受けるつもりだ。
     ◇
 日本年金機構によると、事業は人材派遣会社や市場調査会社など五社に委託。全国二十九拠点で一件当たりの費用を調べたところ、最も高い拠点は四千四十二円で、最も低かった拠点の千八百七十四円と比べ、二倍以上かかっていた(一一年度上半期時点)。
 政府の行政刷新会議は、拠点ごとのコストの違いを問題視。一一年十一月に「処理コストが高い拠点がいまだ残っている」などと指摘した。一二年度予算は、前年度より七十六億円圧縮した六百六十億円が計上された。
 これを受け、機構は一月に全社から処理可能な件数やコストなどの見積もりを提出してもらい、うち一社とは契約しないことに決めた。この業者によると、名古屋市で八百人、千葉県で七百三十人、京都府で五百四十人、東京都で三百七十人が職を失う。機構などと協力し、次の仕事をあっせんする努力をしている。東京以外の三拠点は閉鎖する。
 機構の担当者は「業者は一二年度以降も仕事が取れるわけでないことは理解していたはず」とし「業者の努力で処理スピードが上がっており、今後の作業には影響はない」と語る。厚労省の担当者は「税金を使っているのでできるだけ効率的にやる必要がある。一部の拠点を廃止せざるを得ないのも仕方がない」とする。▲

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