雇用年限問題のポイントがよくわかる事例

■嘱託職員雇い止め 福岡市男女共同参画センター 専門性高くても年限 自治体 「機会均等」名目 導入進む
 (2011/02/24付『西日本新聞』朝刊〔2月24日15:40UP〕)
http://nishinippon.co.jp/nnp/lifestyle/topics/20110224/20110224_0001.shtml
 福岡市男女共同参画センター・アミカスの3人の女性嘱託職員が、3月末で雇用を打ち切られる。嘱託職員の雇用継続を最長5年とする市の「雇用年限」に掛かるためだ。低待遇の非正規職員が全公務員の約3割を占める中、女性の就労を支援する拠点施設さえも、雇用不安の波にさらされている。 (下崎千加)
 「市が失業者を生み出すのか」「官製ワーキングプアを許すな」。雇用継続を求め、市役所前で17日に開かれた集会には、福岡県内の自治体職員ら約500人が集まった。自治労県本部が「非正規の問題を放置すれば、正規の労働環境も悪化する」と呼び掛けた。
 アミカスでは、定期異動がある正規職員8人と、毎年雇用を更新する嘱託職員(週27・5時間勤務)11人が働く。課長や係長は正規が務め、嘱託はドメスティックバイオレンス(DV)やセクハラの相談業務、司書業務、講座運営など市民と接する仕事をする。昇給や手当はなく、年収は正規の3分の1―2分の1だ。
 雇い止めになるのは、5年の年限を迎え、市が昨年末に行った選考試験で不合格になった3人。
 アミカスが市直営となったのは2006年度から。それ以前に運営していた市女性協会時代も含めると、3人の勤続期間は6―22年になる。DV被害やセクハラへの対応など、専門性が高く、相談者との継続した信頼関係が欠かせない仕事をしてきた人もいる。
 選考試験について、市は「外部の有識者を入れて公平公正に行った」と説明。初めから雇用継続を望まなかった1人の枠も含め、新たに4人を公募選考中だ。
 非正規職員は年々増え、自治労の08年調査で推定約60万人。内閣府によると、男女共同参画センターは42%(08年)を占める。保育所や図書館など行政サービスを行う施設が増える中、財政難の自治体が低賃金で済む非正規で賄ってきたことが背景にある。
 実際に、職員の過半数が非正規の町村や、福岡市のように司書全員が嘱託といった職場も少なくない。総務省は「臨時的・補助的な業務」との見解だが、「実態とかけ離れている」との指摘もある。
 3―5年の雇用年限は「雇用の機会均等」を名目として全国的に導入が進む。福岡県でも約4割の自治体で採用している。こうした現状について、非正規職員や労組でつくる「官製ワーキングプア研究会」の白石孝事務局長は「アミカスのように、経験と専門性がものをいう職場では、雇用年限の適用はそぐわない」と批判。一方、福岡市は「できるだけ多くの市民に嘱託職員になる機会を与えることが目的。嘱託職員には採用時に、最長5年であることを伝えている」と説明している。
 ●「女性向け」職場 非正規多く 男女の待遇格差助長
 ▼江原由美子・首都大学東京教授(女性学)の話 公務員、民間とも非正規率は約3割。特に非正規公務員は労働関連法の谷間に置かれ、待遇も悪い。うち8割が女性で、保育所、給食調理など、一般に女性比率が高い職場ほど非正規率も高い。「人の世話をする」家事労働を連想させる仕事を「女がして当たり前」「お金を払うに値しない仕事」と位置付け、非正規でよしとしている。ジェンダー問題であり、男女の待遇格差を助長していると考えるべきだ。
 こうした状況を改善する拠点であるはずの男女共同参画センターで雇い止めが起きているのは問題だ。福岡市以外でも同様の例がある。
 公務員バッシングのしわ寄せは、組合に守られた正規ではなく、非正規に向けられる。「労働の対価」の切り下げは行政サービスの低下につながり、巡り巡って私たちの生活の質も悪化させかねない。▲

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