■有期雇用規制 正社員との格差縮小を
(2012年1月13日『北海道新聞』社説)
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/editorial/343131.html
厚生労働省の労働政策審議会は、パートや契約社員の雇用期間が通算で5年を超えた場合、本人の希望に応じて無期雇用とする制度の導入を提言した。
働く人の約2割を占める有期契約労働者の立場を安定させるのが、狙いだ。
政府は今月開会する通常国会で、関連法の改正を目指す。
労働基準法は、有期雇用の1回の契約期間を、原則3年以内としている。しかし、常に仕事があるのに正社員を雇わず、同じ労働者と短期契約を繰り返すケースが増えている。人件費を削減するためだ。
これでは名ばかりの有期雇用で、低賃金で働かせるための方便と言われても仕方ない。
恒常的に仕事があり、労働者が勤務を続ける意思を持っているのならば、正社員と同様に無期雇用とするのは当然だろう。
企業にとっても、技術や品質を維持し、伝承する上でメリットがあるはずだ。
通算雇用期間の上限について、審議会では労働側が「雇用は原則無期。有期雇用は例外であるべきだ」として3~5年を主張。企業側は「人材評価などができる十分な時間が必要」なため、7~10年を求めた。
両者の主張の間を取る形で、5年に落ち着いた。
ただ、企業は無期雇用になるのを避けて、5年の上限に達する前に雇い止めをする懸念がある。
政府は抜け道ができないよう、実効ある防止策を考えるべきだ。
日本労働弁護団などは、継続的に仕事があるのに雇い止めをした場合、新たな有期契約労働者の雇用を認めないよう求めている。傾聴すべき考えだ。
審議会は、無期雇用に切り替えた後の賃金などの労働条件について、必ずしも変える必要がないとした。企業側の負担に配慮したためだ。
有期契約労働者の74%は、年収200万円以下にとどまっている。世帯主となって一家を支えている人も多い。
このままでは、正社員との待遇格差が放置される可能性がある。
欧州では、1999年に欧州連合(EU)有期労働指令により、無期雇用を前提に、雇用形態の違いによる差別を禁止している。
正社員並みの仕事をしているのに、昇給や福利厚生、有給休暇などに差があるのなら、無期雇用となっても不満は残る。
企業は待遇格差の解消に努める必要がある。
政府も、無期雇用に転換した後の働き手の生活水準を引き上げられるよう支援策に知恵を絞るべきだ。▲
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