■若者の雇用格差 企業は正社員化を急げ
(2011年7月9日『東京新聞』社説)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2011070902000037.html
企業の採用抑制で一九七〇年代後半生まれの世代は他世代よりも非正規雇用比率が高い-今年の労働経済白書は若者の雇用格差を取り上げた。放置すれば社会が揺らぐ。まず正社員化で是正を急げ。
夏空の下、汗まみれのスーツ姿が目立つ。来春の卒業予定者だけでなく既卒者や再来年の就職をめざす学生たちだ。正規と非正規とでは雇用期間や賃金格差が大きいことを知っているから真剣そのものだ。
今年の白書はバブル崩壊後の日本経済と世代ごとの働き方を分析した点が特徴である。七〇年代後半生まれの、いわゆるポスト団塊ジュニア世代は社会に出て十年ほどたっても非正規比率は10%台半ば近くの水準が続いている。
その前後の七〇年代前半生まれの団塊ジュニアと八〇年代前半生まれの世代は、それぞれの景気回復の恩恵を受けて非正規比率は低下した。
こうした格差の原因について白書は七〇年代後半生まれは就職時に「氷河期」に直面し、派遣やアルバイトなど非正規で就職せざるを得なかったこと。その後も不景気で正社員に転換する機会を逃してしまった-と分析する。
非正規で働く人は一般的に雇用期間や処遇が不安定で所得も少なく職業能力を高める機会にも恵まれない。それが晩婚化・非婚化、さらに少子化につながりかねない。不本意で非正規に就かざるを得なかった若者を放置していては企業にも社会にもマイナスだ。
そこで白書は国に非正規雇用者の職業能力を高めて正規雇用への転換を促すことや、企業に対して世代間のギャップを埋めるために人材を積極的に採用し育成していくことなどを求めている。
若者たちの正社員化は格差を是正する意味で賛成だ。
経済界はバブル崩壊後、従業員を「終身雇用の正社員は基幹職に絞り専門職や一般職は有期雇用の非正規で」とする雇用方針を提唱した。それが新卒抑制と非正規拡大という今日の格差につながったとの指摘がある。この際、正社員重視に転換すべきだ。
同時に、最低賃金引き上げなど非正規雇用者の待遇もしっかりと改善してもらいたい。
熾烈(しれつ)な競争を考えれば企業が有能な人材を即戦力として採用する余地は大きい。一方、労働側からも非正規を求める者もいる。欧州諸国で見られるように、どんな働き方でも安心して働ける雇用と賃金体系の確立が急務である。▲
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